2013年1月30日水曜日

透明導電フィルム、日立化成が量産、タッチパネル用、秋から。

 日立化成は29日、タッチパネル向けの透明導電フィルムを今年10月から量産化すると発表した。スマホ(スマートフォン)やタブレット(高機能携帯端末)向けに販売を進め、2015年度には年60億円規模の売上高を目指す。
 透明導電フィルムは米カンブリオス・テクノロジーズ(カリフォルニア州)と共同開発した。日立化成の感光性フィルムとカンブリオスの銀の導電インクを活用し、折り曲げることができるフィルムを開発した。
 日立化成は山崎事業所(茨城県日立市)で月産数十万平方メートルの生産設備を稼働させている。サンプル出荷を進める中で、一定の受注が見込めると判断。生産能力を拡大し、量産化に乗り出すことを決めた。
 タッチパネルを巡っては、スマホやタブレットに加え、パソコンやテレビなどで今後、採用機器が増えるとみられる。ディスプレイサーチ(東京・港)の調査では、15年のタッチパネル市場は12年比で1・7倍に拡大する。

東レ、コレが自慢のナノ技術、新フィルム、絵柄転写円滑、硬さ異なる樹脂を積層。

 東レは家電や自動車の部品に絵柄や文字を転写する「離型フィルム」の開発品を発表した。フィルム上に印刷層の膜をつくったり、この膜を部品に貼りつけたりする工程が、通常の離型フィルムを使うより円滑にできるという。サンプル出荷を始めており、年度内の正式販売を目指す。
 東レはナノ(10億分の1)レベルの高分子技術を応用。薄いフィルム内に柔らかさが異なる樹脂を積層させた。
 印刷会社はこのフィルムを使えば、塗膜状の印刷層をつくるために溶剤を揮発させる工程で、セ氏80度でも耐えられる。ポリエチレンテレフタレート樹脂で製造したフィルムの場合、50~60度での作業が必要だ。「製造スピード向上につながる」(東レ)とみる。
 さらに、部品会社が新開発フィルムを使って部品に絵柄を貼りつける場合、120度で可能。170度にする必要があるポリカーボネート樹脂などと比べ、熱に弱い部品も取り扱いやすい。
 スマートフォン(スマホ)など小型機器をまず狙う。2015年度に売上高で10億円以上が目標だ。

送電ロス極小の超電導線、古河電工、30年耐久確認。

 古河電気工業は29日、27万5000ボルトの高電圧送電が可能な超電導線の実証実験で、30年間の送電にも耐える耐久性能を確認したと発表した。超電導線は送電時の電力ロスがほとんどなく、スマートグリッド(次世代送電網)のカギとなる技術。高電圧を流す地中送電線などへの導入を視野に開発を進め、2020年前後の実用化を目指す。
 実証実験は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などとの共同で、古河電工の中国子会社で昨年から実施していた。長さが30メートルの超電導線に通常の送電環境下で30年分にあたる高負荷を与えて実験をしたが、部分放電などの製品劣化は見られなかった。
 実験した超電導線は1回線で大規模発電所1基分にあたる150万キロワットの送電が可能。従来のケーブルでは3回線が必要だったが、回線数の削減により、敷設コストは半分程度。また送電ロスも4分の1程度に抑えられるという。
 古河電工は国内の高圧送電網が更新時期を迎える20年前後の実用化を視野に生産技術の開発などを進める。また新興国などの海外インフラへの展開も模索していく。

オリエンタル酵母、広がる領域――iPS研究や動物園に貢献

 パン作りに欠かせないイースト(酵母)の最大手、オリエンタル酵母工業は1929年に発足した日本初のイースト製造会社。80年余りを経て、いくつもの事業領域を持つ企業に進化した。
 たとえば、2012年のノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥氏が所長を務める京都大学のiPS細胞研究所が使う研究用マウスは3年前から同社が提供している。iPS細胞関連では培養に使えるたんぱく質なども販売している。
 上野動物園(東京・台東)、東武動物公園(埼玉県宮代町)などには飼料も納めている。年商は数億円に上る。東日本大震災のときには被災地の動物園に飼料を配って回り、話題になった。
 何の脈絡もなさそうに見えるこれらの事業はすべてイーストから派生している。イーストの発酵技術を生かし、1951年に実験動物用の飼料に参入し、80年代にはバイオテクノロジーを本格的に開始した。
 同社の主力事業はイーストや「フラワーペースト」と呼ばれる菓子パン向けクリーム。10年12月の上場廃止以降、業績の詳細は公開していないが、バイオ事業などの副業は年商約600億円のうち、4分の1程度とみられる。50年以上を費やし、イーストから派生した堅実な多角化路線が国内の食品市場が縮小するいま、業績を下支えしている。
 事業の多角化は難しい。国内の食品、飲料メーカーでも事業領域を広げるM&A(合併・買収)が活発だが、「大きな相乗効果が出た成功事例はあまり見かけない」(食品メーカー幹部)のが現状だ。
 味の素はアミノ酸を応用して食品や飼料、医薬品、半導体用フィルムまで生産している。昨年10月、アサヒグループホールディングスにカルピスを920億円で売却した。カルピスは乳酸菌が中核技術の会社。思うように相乗効果が出せず、見切った格好だ。カルピス売却はコア技術であるアミノ酸への「特化」を意味する。
 中核技術に磨きをかけることは、時間がかかる。ただ、その道の「オンリーワン」になれば得られる果実は少なくない。デフレ、原材料高など厳しい時代だからこそ、地道な戦略が必要だ。

鈴木商店、さびにくい鉄製ネジ開発

 ■鈴木商店 ねじ卸の鈴木商店(静岡県焼津市、鈴木弘朗社長)は特殊な表面処理を施すことで、さびにくくした鉄製ネジを開発した。同程度の性能を持つステンレス製に比べて3割程度安くなるという。独自製品をテコに住宅メーカーや太陽光発電装置の施工会社などに売り込む。
 炭素を配合して強度を上げた鉄を亜鉛で下処理したうえで、表面をニッケルやクロムなどで覆う。生産委託先と共同で実施した試験で、最も高性能の商品の場合、約3000時間と一般的なステンレス製ネジと比べて遜色のないレベルの耐食性を確認したという。

殺菌剤の製造装置、微酸性電解水研究所、食品の殺菌、安全に


流水感覚、人体に優しく
 食品業界で「微酸性電解水」が注目を集めている。食中毒の原因菌に対する殺菌効果がある一方、一般の殺菌剤に比べ人体への悪影響は少ないという。微酸性電解水研究所(神奈川県藤沢市、土井豊彦社長)はその殺菌剤の製造装置を開発する。集団食中毒のニュースが世間を騒がす中、食の安全確保に腐心する食品メーカーに売り込む。
 微酸性電解水は塩酸を電気分解してできる次亜塩素酸を水で薄めてつくる。食中毒の原因となる大腸菌などの細菌やノロウイルスに対する殺菌効果が確認されている。2002年には厚生労働省から殺菌目的で使う食品添加物として認められた。土井社長は「飲んでも大丈夫です」と話す。流水で洗うような感覚で食品や生産設備を洗浄・殺菌できる。大量の水ですすぐ必要がなく、コスト面の利点もある。
 実は土井社長こそが、微酸性電解水の生みの親だ。大学卒業後、大手乳業メーカーで1990年代から研究を始めた。
 食品業界では食品や生産設備の洗浄殺菌に、次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ソーダ)を使うのが一般的だ。塩素系漂白剤やプールの消毒液でわかるように、独特の塩素臭がある。実際、生産現場では食品に臭いが付いたり食感が悪くなったりするといった悩みを抱えていた。有機物と混ざると発がん性物質を生成することがあり、欧州では使用を規制している国もある。
 「殺菌剤としての有効成分だけ取り出せないか」。こう考えて塩酸を電気分解する方法を思い付く。乳業メーカーで実用化までこぎ着けたが、社内での事業展開のスピードに満足できず、「もっと世界に広めたい」と09年に独立した。
装置開発に苦労
 製造装置は電解槽に塩酸の原液をポンプで送り込んだ後、電気分解して次亜塩素酸をつくり、水で薄めて取り出す。原理は単純だが、電解槽の中は高濃度の塩酸で満たされており、「生成方法の研究より装置開発に苦労した」と振り返る。
 独立後も装置開発を続け、11年から本格的に販売を始めた。塩酸が電解槽の外部に漏れにくい構造にしたり、電極に耐食性の高いチタンを使ったりしている。電解槽は1台の装置に2個。万が一、片方が故障した場合にも食品工場の生産への影響を避けるための工夫だ。
 同社では装置の開発と検査を手掛け、部品生産や組み立ては外部の工場に委託する。慶応大学湘南藤沢キャンパスのインキュベーション施設内のオフィスには検査を終えた出荷待ちの装置が並ぶ。価格は微酸性電解水の生産能力が1時間あたり5千リットルの主力商品で950万円。同360リットル(100万円)の卓上装置や2万リットル(2000万円)の大型装置もそろえる。
韓国企業も導入
 コンビニ向けのカット野菜やサンドイッチを生産する食品工場などで採用されている。豆腐工場では出荷前の加熱処理が不要になり「大豆本来の甘みのある豆腐ができると好評だ」(土井社長)という。ボイラーの燃料費を削減できるメリットもある。韓国のビールメーカーにも導入したほか、欧州からも引き合いがある。これまでに100台が売れた。
 12年の売上高は7000万円。13年は倍増する計画だ。手づくりに近い状態から、部品設計の見直しなど量産可能な装置への改良を進めている。
 日本国内では年間100万トンの次亜塩素酸ソーダが消費されているという。これをすべて微酸性電解水に置き換えるのが、土井社長の目標だ。

2013年1月29日火曜日

大同特殊鋼、プリウスの「魔法の粉」増産――スマホに供給へ


新ライン建設、成長分野に、磁力付き合金 HV基幹素材
 国内新車販売でトップを走るトヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「プリウス」。この人気車種で使われている大同特殊鋼製の特殊な鉄粉にひそかな注目が集まっている。燃費を良くし製造コストも削減できるためHVには欠かせない素材となっており、新たにスマートフォン(スマホ)への供給も狙う。大同特殊鋼は4月にも増産を始める。韓国など海外勢からも引っ張りだこの“魔法の粉”とは一体何なのか。
 大同の名古屋市内の「築地テクノセンター」。ここにあるビル内の応接室の入り口にはハングル語の案内板がかかっている。国内の自動車メーカーの関係者ばかりではなく、韓国からのビジネスマンも増えているからだ。お目当ては同拠点内で生産している金属製の粉末だ。
 この鉄粉の名称は「金属製磁性粉末」。大同が開発した。鉄にシリコンを3%程度混ぜた磁力付き合金で、直径0・1ミリメートルほどの粉状に加工されている。
 トヨタのプリウスにはバッテリー電圧を上げる電磁石に似た装置(リアクトル)が搭載されているが、昇圧性能を左右する鉄心はこの鉄粉によってつくられている。現行の3代目プリウスは最大電圧が先代の500ボルトから650ボルトへと引き上がった。これは新たなリアクトルがあることで昇圧機能が高まったため。結果としてモーターの小型、高出力化が可能になった。さらにモーターの駆動電流も低減できるため、インバーターの発熱量を抑え部品の小型化が進んだという。
 もともとトヨタは大手鉄鋼メーカーの電磁鋼板を加工することで、リアクトルの鉄心をつくってきた。ただ、その場合は板を切り抜く際に無駄が出るほか組み立てが煩雑。鉄粉ならば金型に入れてプレス成形するだけでよく「3分の2のコストですむ」(大同特殊鋼の大河内敬雄・粉末工場長)という。
 トヨタは、2001年、大同の特許資料からこの技術を“発見”。HV専用鉄粉の開発を持ちかけた。
 とはいえ、もとはパソコン回路向けを想定した技術だ。磁力のバランス、耐久性、耐熱性などHVが求める条件をクリアするには壁があった。プレス成形しても壊れにくい粉の形状にし、熱を帯びないようにひとつひとつの鉄粉を特殊材で覆う。01年に始まった共同開発は途中の中止期も含め、実用化のメドがたったのは08年だった。
 大同の鉄粉を使ったリアクトルは安いだけでなく、磁力特性も板材製より向上している。結果としてリアクトル自身を小さくできるようになったほか、使用電流も少なくすむためモーターなど周辺部品の電線コストも抑えられる。トヨタにとっては原価ダウンと燃費改善という、HVシステムの根底を支える基幹素材だ。09年発売の現行プリウスから全面採用された鉄粉は11年末発売の小型HV「アクア」でも使われている。
 大同の次の課題はさらなるコスト改善とライバルとの競争だ。トヨタは14年度にも次期モデルのプリウスを発売する予定。システム価格をさらに引き下げる方向で部品の最終選定を進めている。JFEスチールなど他の製鉄会社も挽回を目指し新技術の開発を急いでいるもよう。大同特殊鋼は「質の良さをアピールしたい」(大河内工場長)と勝負に挑む構えだ。
 12年はトヨタの国内販売車のうち約4割がプリウスなどのHVだったという。量産効果がコストダウンの最大要因とされるHVシステムだが、今までにない素材や部品の採用もそこに一役買っている。
 最近は他の国内の自動車メーカーのほか、韓国や欧米メーカーからも問い合わせがあるほか、スマホやタブレット端末への供給も始めようとしている。
 大同の粉末はスマホにも重要な素材になり得る。スマホなどの電子機器の電子回路では電圧変換などに使う「インダクタ」と呼ばれる部品を搭載している。大同の粉末を採用したインダクタは酸化鉄が主成分の従来の素材に比べて電流を流しやすい。電圧変換部品であるインダクタのサイズを小さくしてスマホ自体も小型にできる利点がある。
 粉末事業にアクセルを踏む大同。「築地テクノセンター」内の工場に金属粉末の生産ラインを建設中だ。HVやスマホ向けのラインとし、4月には増産を始める。名古屋市内の拠点に約10億円を投資。生産能力を年1万5000トンと従来比で5割程度増やす。
 大同は「まだ社内では小さなビジネスにすぎないが、成長分野だ」(同社幹部)という。粉末事業は連結売上高4500億円(13年3月期見込み)の1%強にとどまる。自動車向け中国事業などが伸び悩む中、特殊鋼低迷の中で成長する数少ない事業だ。
 大同は粉末事業を15年3月期の事業売上高で90億円と現状比5割増やす計画だ。クルマからスマホへ。夢の素材は大きく花開くのか。プリウスに端を発した粉末の波及効果は計り知れない。