日立製作所は4日、環境負荷が小さい次世代の火力発電設備で、窒素などの希釈剤を使わずに大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の発生を抑える技術を開発したと発表した。従来は燃料の主成分である水素の燃焼温度が高くなるほどNOxが増えるため、希釈剤を投入する必要があった。燃料に空気を急速に混ぜ、燃焼温度の上昇を防ぐガスタービン用燃焼器を試作。希釈剤を扱う専用装置が不要になり設備投資が減らせる。
石炭をガス化してから燃やす石炭ガス化複合発電(IGCC)に、二酸化炭素(CO2)を地下に封じ込める回収・炭素貯留(CCS)技術を組み合わせた火力発電設備への技術活用を想定している。IGCCは石炭ガスでガスタービンを回すとともに蒸気も発電に使う方式で、従来の石炭火力より発電効率が高く、CO2排出量が減る。
試作したのはガスタービンに組み込む燃焼器で、CCSでCO2を回収した後に使う。燃料ノズルの形状と位置を工夫し、燃料と空気が空気孔内で小さな渦を作り、そこを抜けると混ざり合う仕組みにした。水素の燃焼温度は通常セ氏2000度にのぼりNOxの排出が多いため、従来は大量の希釈剤を投入し温度を下げていた。
試作機は実験でのNOx発生量が10PPM(PPMは100万分の1)以下となり、国の環境規制値である70PPMを下回ったとしている。燃料の水素濃度はCO2の回収率が高いほど上昇するが、従来は濃度に応じて別々に燃焼器を設置する必要があったという。今回の試作機は1つで幅広い範囲の濃度に対応できる。