2011年7月11日月曜日

iPS万能性維持、重要なたんぱく質、理研が発見

 理化学研究所のグループは11日、新型万能細胞(iPS細胞)があらゆる細胞に分化できる能力を保つのに重要なたんぱく質を見つけたと発表した。iPS細胞の安定培養などに役立つ成果で、米科学誌ステムセルズ(電子版)に掲載された。
 iPS細胞は通常の培養では万能性が失われてしまうため、特殊な細胞の上で培養する。この細胞から分泌されるたんぱく質「LIF」などの作用で、万能性を保てるのが分かっている。
 理研オミックス基盤研究領域の鈴木治和プロジェクトディレクターらは、マウスのiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)で実験。LIFのほかに「CCL2」というたんぱく質も、同様の作用があることを突き止めた。iPS細胞ではこの2つのたんぱく質が一緒に働いていた。CCL2は一定の濃度があれば単独でも万能性を維持できる。ヒトのiPS細胞でも同じ仕組みが働いているとみている。
 神経や骨などあらゆる細胞に分化できるiPS細胞は、再生医療への応用が見込まれている。

カイコガのオス、遺伝子が性行動支配、東大、フェロモンDB化へ

 東京大学先端科学技術研究センターの神崎亮平教授と桜井健志特任助教らのグループは、カイコガのオスの交尾行動がひとつの遺伝子で引き起こされることを発見した。メスが放つ性フェロモンとくっつく受容体(たんぱく質)を作る遺伝子が交尾行動まで支配していた。研究グループは、昆虫のフェロモンのデータベース化などを進める計画だ。
 同定した遺伝子は「BmOR1」。オスの触覚の細胞の中に受容体を作る。神崎教授らは、メスが放つ性フェロモン、ボンビコールと受容体がくっつくと、オスがダンスをしてメスに近づき交尾をすると考えた。
 受容体を作るひとつの遺伝子で交尾行動を引き起こすことを確認するため、カイコガにコナガという別のガのフェロモンとくっつく受容体を作る遺伝子を入れ、触覚の細胞に発現させた。遺伝子操作したカイコガのオスとコナガのメスを一緒の容器に入れると、カイコガのオスはコナガのメスに対してダンスをし交尾行動をした。
 オスが同じ種類のメスに交尾行動をするのは、フェロモン受容体の種類で決められているからだと考えられるという。
 昆虫のフェロモンは約200種類ほどある。これらをデータベース化し、薬物などと結合しやすい受容体を遺伝子操作で発現させれば、目的の薬物を見つける生物センサーとして使える可能性がある。

半導体、最先端品にシフト、早期量産で投資回収急ぐ、エルピーダ、東芝

ルピーダ 生産比率、来春5倍
東芝 新工場稼働、6割に
 半導体大手がデータ記憶用半導体であるメモリー分野で、最先端の微細化技術を使った製品への生産シフトを加速する。エルピーダメモリは2012年3月末までに最先端製品の生産比率を現在の約5倍に高める。東芝は7月中旬に最先端品に生産を特化した工場を稼働、9月には6割に高める。早期に最先端製品の量産体制を整え、投資回収を早める。
 DRAMで世界3位のエルピーダは12年3月末までに、広島工場(東広島市)と台湾工場の生産能力に占める回路線幅30ナノ(ナノは10億分の1)メートル以降の最先端品の生産比率を75%に増やす。
 6月末時点の比率はおよそ15%だった。DRAMで世界首位の韓国サムスン電子の最先端品比率は50%とみられ、25ナノメートルの量産開始は早くても今年12月になる見込み。エルピーダは今年中に最先端比率でサムスンを追い抜くことになる。
 エルピーダは5月に世界で初めて25ナノメートルを開発し、微細化技術の開発競争で世界の先頭に立った。同時にDRAMの回路設計を見直し、少ない工程数で生産する手法を確立した。
 これにより現行世代から最先端品に量産をシフトするのにかかる設備投資を従来の3分の1~約4分の1に抑制。韓国や台湾、米国のライバル企業よりも低コストで最先端品を生産できる体制を整えた。
 NAND型フラッシュメモリーで世界2位の東芝は、四日市工場(三重県四日市市)の新工場を最先端品の中核製造棟に位置付け、24ナノメートル、19ナノメートルのフラッシュ量産に乗り出す。これまで最先端品は少量生産にとどめていたが、新工場立ち上げを機に、9月には最先端品の生産比率を一気に60%へ高める。
 東芝はフラッシュの微細化技術開発で世界をけん引し、サムスンに約半年の差を付けている。ただインテルとマイクロン・テクノロジーの米国連合の追い上げなど、競争は激しい。新工場稼働に合わせて最先端品を大量生産し、海外勢に対する優位性を確保する。
 半導体業界で競う韓国や台湾企業に比べて、日本企業は法人税や人件費、水や電力などインフラ費用が高い。円高・ドル安で収益が目減りするなど生産活動には逆風が吹いている。このため利幅の大きな最先端品分野の量産を加速し、収益を安定させる必要があった。

ポリフェノールの合理性

 「フレンチパラドックス」という言葉がある。フランスの逆説という意味だ。1990年代の初め頃から世界中で広まった。
 フランス料理は肉料理が主体だが、それにクリームやバターがたっぷり入ったソースをかける。食べ物に動物性の脂肪が多いから、当然フランスの人たちは動脈硬化になり、心筋梗塞など心臓・血管系の病気が多いと予想される。ところがフランス人が心臓病で死亡する割合は他の西欧諸国に比べて少ないといわれている。脂肪分が多い食事を取っているにもかかわらず心臓病の死亡率が低い、というのがフレンチパラドックスの由来である。
 パラドックスの理由としていわれるのが、赤ワインに多く含まれるポリフェノールだ。実際、フランスの人たちは赤ワインを多く摂取する。これで日本でも赤ワインブームがおきた。ただ、赤ワインを多く飲むことによる肝臓病の増加といったマイナス面もある。
 ポリフェノールには抗酸化作用がある。植物(食物)に含まれる抗酸化物質としてはビタミンCや同Eなどが有名だが、ポリフェノールもそのひとつ。フラボノイド、クマリン、ヒドロキシケイ皮酸などその構造からたくさんの種類がある。このうちフラボノイドの仲間として知られるのは緑茶などに含まれているカテキンで、大豆などに多いイソフラボンである。また、ヒドロキシケイ皮酸の代表的なものとしてはコーヒーポリフェノールがある。
 体の中では活性酸素ができる。活性酸素は細胞にダメージを与え、シミやしわを作るなど皮膚への悪影響のほか、老化や動脈硬化、糖尿病、がんなどの引き金になるといわれる。活性酸素は常にできているが、普通はカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼといった酵素や、植物由来の抗酸化物質が生成した活性酸素を消している。酵素がよく作られ、食事などから植物由来の抗酸化物質を摂取できる若いうちはいい。それが高齢者になると……。ポリフェノールを取ることは、ある意味では合理的なのかもしれない。
 2010年にお茶の水女子大学生活環境教育センターの近藤和雄教授らが発表した調査では、日本人が飲料から取るポリフェノールとしてはコーヒーの47%が最も多かった(緑茶は16%で第2位)。

携帯の電磁波、評価には時間――WHO「発がん性があるかもしれない」

証拠限定的、冷静に対応
 世界保健機関(WHO)が5月、携帯電話から出る電磁波に「発がん性があるかもしれない」という評価を下した。発がんのリスクはコーヒーや自動車の排ガスと同じ程度。ただ証拠は限定的で、WHOは今後、多角的に調査を続け、4年以上かけて総合評価をまとめるとみられる。
コーヒーと同分類
 評価をまとめたのは、国際がん研究機関(IARC)のタスク会議。同会議は携帯電話と脳腫瘍(神経こう腫、聴神経そう腫)に関する疫学研究、動物実験の結果から、携帯電話が出す電磁波の発がん性を「2B」と評価した。これは危険性を示す5つのランクのうち上から3番目。コーヒーや鉛、ガソリン自動車の排ガスと同程度のリスクだ。
 WHOは欧米で電磁波の健康影響が指摘されたのを受け、1996年から調査を始めた。疫学の分野では約1万人を対象に日本や英、仏、独など13カ国が参加した国際研究と、スウェーデンが独自に実施した成果を採用した。携帯電話の累積通話時間と神経こう腫の発症率を比較。通話時間が1640時間未満の場合は発症率は増えなかったが、それ以上では1・4倍高くなった。スウェーデンの研究でも通話時間が長くなるほど発症率が増加。2000時間以上通話した場合、携帯を使わないグループに比べて3・2倍も高くなった。
 同会議では疫学の結果からは、携帯電話が出す2ギガ(ギガは10億)ヘルツの周波数帯の電磁波に長時間さらされると、神経こう腫の発症につながるかもしれないと判断した。
 一方、動物実験では明確な結論は出なかった。ラットやマウスに2年間にわたり電磁波を当てた実験など40件以上の研究を調べたところ、がんを発症したマウスなどの匹数は当てなかった場合と比べて増えなかったものの、体内にできるがん細胞の数が増えたという実験が1件だけあった。同会議は動物実験の結果からは発がん性があるかどうかは不明確として、発がん性は「限定的な証拠にすぎない」とした。
 疫学調査や動物実験の結果と合わせて総合的に判断し電磁波を「人間に対して発がん性があるかもしれない」と評価した。これは「発がん性がある」としているたばこの煙やベンゼン、「おそらく発がん性がある」のポリ塩化ビフェニール(PCB)などより下のランクで、「発がん性を分類できない」のカフェインやコレステロールより上だ。
第1段階の一部
 ただ、同会議の発表は3段階あるリスク評価のうち、第1段階である「障害性評価」の一部。「リスクを定量的に評価しておらず、冷静に受け止めるべきだ」(総務省)。WHOは今後、神経こう腫と聴神経そう腫以外の脳腫瘍も疫学研究や動物実験を進めるほか、神経こう腫については追加の実験を実施してリスクを定量的に評価する。さらに電磁波による発がん性のリスクを軽減するガイドラインも策定する考えだ。
 WHOは発がんのリスクがあるかどうか最終的に判断する作業はこれまでも慎重に進めてきた。2000年代に実施した送電線などから出る3~3キロヘルツの低周波に関するリスク評価は約10年かかった。経済産業省系の財団法人、電気安全環境研究所電磁界情報センターの大久保千代次・所長は「今回の評価も4年以上かかるのでは」と話す。
 国内でも携帯電話の発がんリスクを調べる動きはある。東京女子医科大学の山口直人教授らは1日当たり20分を超えて携帯電話を使っている人が聴神経そう腫にかかるリスクは、使わない人に比べ2・74倍高いとする論文をまとめた。聴神経そう腫にかかったことがある約800人を対象に国内で実施した疫学調査の結果だ。ただ山口教授は「今回の実験だけで、携帯電話とがんの因果関係は証明できない」と話す。さらに複数回の疫学調査を実施した後、動物実験などと合わせてリスク評価する必要があるためだ。
 携帯電話の電磁波について総合的なリスク評価が発表されるまでは時間がかかりそうだが、どうしても気になる人はイヤホンやマイクを使い、携帯電話を頭部から離して使えば不安も和らぐ。長電話を控えてメールでやり取りする工夫もできる。また携帯電話は電波状況が良いところで通話するほど、出力が抑えられ、出てくる電磁波も弱くなる。仕事や生活と切り離せない道具である以上、リスク評価が確定するまでは冷静に付き合っていくとよいだろう。

宇宙開発、変わる勢力図――戦略の再構築、日本も急務に、独自開発、予算が壁。

 スペースシャトルの引退で、日本の有人宇宙開発は転機を迎える。ISSへ向かう手段は当面、ロシアのソユーズのみになる。約20年にわたりシャトルに依存して有人宇宙開発を続けてきた日本は、「シャトル後」の展望を早急に打ち出す必要がある。
 シャトルに搭乗した日本人宇宙飛行士は、1992年の毛利衛さんをはじめ計7人。シャトル退役後、ソユーズでは6月に古川聡さんを乗せて発射、来年以降も星出彰彦さんらの搭乗予定がある。
 ただ、ISSへの有人飛行をソユーズだけに依存することへの懸念もあり、宇宙航空研究開発機構の立川敬二理事長は「複数の国・地域が打ち上げ能力を持つべきだ」と日本独自の有人宇宙船に意欲を示す。
 日本は、日本人飛行士を月面に送り込む有人宇宙開発の構想を2009年にまとめた。米国の月探査計画に歩調を合わせたが、10年に米国が月探査計画の中止を発表し、構想自体が宙に浮いた格好だ。
 日本単独で有人宇宙開発に乗り出すには、コストが大きくなりすぎるため現実的には厳しい。政府の宇宙開発戦略本部(本部長・菅直人首相)の専門調査会は6月に宇宙政策の提言をまとめたが、予算面に配慮して有人宇宙船について具体的な表現はない。今後、長期展望をどうするのか早急に検討が必要だ。

宇宙開発、変わる勢力図――ロシア、「大国」へ新基地、中国、計画目白押し

米スペースシャトルの退役でISSを往復する唯一の有人宇宙船保有国として存在感が高まるロシア。年内には新たなロケット打ち上げ基地に着工し「宇宙大国」の地位固めを狙う。
 ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は5日、極東アムール州政府との間でボストーチヌイ基地建設に関する合意文書に署名した。4000億ルーブル(約1兆2000億円)近い総工費を投じ、2015年の稼働を目指す。
 ソユーズを打ち上げる隣国カザフスタンのバイコヌール宇宙基地など他の基地依存を減らし、ロシアの宇宙ロケットの半分近くをボストーチヌイ基地で発射。有人宇宙船を19年までに打ち上げ、繰り返し利用可能な宇宙船の開発も行う予定だ。
 メドベージェフ大統領は宇宙開発を最重要の政策課題の一つに掲げる。1990年代には経済混乱で停滞したが、景気の回復を受け「新たな巨大な国家プロジェクト」(プーチン首相)を始動させる。
 【北京=品田卓】中国は今年後半に宇宙ステーション「天宮1号」を打ち上げるほか、月面基地や火星探査にも動き出した。
 中国独自の宇宙ステーション計画は天宮1号に続き宇宙船の神舟8号を打ち上げ、ドッキングテストをする。12年に神舟9号と10号を上げ、宇宙基地の基礎を築く。16年までに実験室を打ち上げて中規模実験の環境を整え、20年前後には実験モジュールを打ち上げる。
 宇宙開発での成功は国威発揚や軍事的優位にも直結するとあって、中ロ両国は米国への対抗色を強めている。

宇宙開発、変わる勢力図、最後のシャトル打ち上げ、米、陰る威信、民間主導を模索

 スペースシャトルの30年の歴史に終わりを告げる「アトランティス」が8日、打ち上げられた。国際宇宙ステーション(ISS)への日米の有人飛行は当面、ロシアの「ソユーズ」頼み。オバマ大統領が新たに掲げた火星への有人飛行も財政難から不透明さが漂う。「宇宙大国」の存在感を増すロシアに加え、背後に宇宙ステーション計画を持つ中国が迫る。シャトル退役は世界の有人宇宙開発の転換点ともいえる。
 【ケネディ宇宙センター(フロリダ州)=御調昌邦】スペースシャトル退役後の米国は宇宙開発の「新たな時代」(オバマ大統領)を目指す。ISSなど低軌道への輸送は民間企業に任せ、米航空宇宙局(NASA)は火星など非常に遠い「深宇宙」への有人探査を担うが、技術開発や資金確保などの面で課題は多い。
 オバマ大統領は、ブッシュ前政権が打ち出した月への有人再飛行計画を撤回。昨年4月、2030年代半ばの火星軌道への有人飛行計画を掲げた。NASAのボールデン局長は火星や小惑星への探査へ「深宇宙用の有人宇宙船と新たな大型ロケットという2つの重要な要素を追求していく」と意気込む。
 ただ計画には不透明な要素がある。NASAの年間予算は現在、約190億ドル(約1兆5000億円)。オバマ大統領は昨年、5年間で同予算を60億ドル増額する方針を示した。だが、財政赤字問題を背景に米議会では宇宙開発予算の抑制を求める動きも出ている。今後も「聖域」として扱えるかはわからない。
 火星軌道など深宇宙への有人飛行には新技術の開発が不可欠なうえ、20年強も先の計画だ。ブッシュ前政権の月への飛行計画も資金面が課題だった。火星は月と比較にならないほど遠い。
 一方、ISSへの物資や飛行士の輸送は基本的に民間企業に担わせ、打ち上げなどの費用抑制を目指す。昨年12月には著名起業家のイーロン・マスク氏が率いるスペースX社が、民間企業としては初めて大気圏に再突入する宇宙船の飛行を成功させた。
 ただ、民間企業主導の仕組みがうまく機能するか課題は多い。民間への移行が順調に進んだとしても、米国製のロケットと宇宙船で飛行士をISSに送り届けられるのは早くても数年後とみられる。この間は、飛行士の輸送はロシアの「ソユーズ」に頼ることになり、有人宇宙探査で米国の影響力が弱まるのは避けられない。

液晶の苦杯バネに産業転換を

 液晶パネルが利益を生みにくい産業になりつつある。国内メーカーの苦戦が続くほか、最大手の韓国・サムスン電子も先週発表した4~6月期決算でこの分野が赤字になった。
 原因はメーカーの乱立による価格の下落だ。例えば中国ではテレビ用の液晶パネルをつくる新興企業が続々と産声を上げ、今年だけで4~5工場が新たに稼働する。製造装置さえあればだれでも参入できる。それがこの市場の現実になった。
 日本の電機メーカーはすでに事業の見直しを迫られている。シャープは先月、テレビ用の生産を減らし、スマートフォン(高機能携帯電話)などに需要が伸びている中小型液晶パネルに力を入れると発表した。
 すでにテレビ用から撤退した日立製作所も東芝とソニーが進める中小型パネルの事業統合交渉に加わった。技術が優位な時にコスト競争力をつけておこうとの狙いである。
 日本企業は液晶技術の草分けだ。部品や材料産業のすそ野も広く簡単にはこの分野を捨てられない。それだけにあらゆる手を尽くし、巻き返しの機会を狙っていくのが重要だ。
 ただ、これからは技術を磨きコストを下げるだけでは利益を期待できない。中国メーカーなどは自国に成長市場を抱え、今後も力をつけていく。優れた製品を送り出しても息をつく間もなく追いついてきそうだ。
 それは太陽光パネルやリチウムイオン電池など他の分野も同じだろう。価格競争力の戦いになれば日本は不利になり、それを避けるには従来と違う発想の経営が必要になる。
 日立や東芝は最近、IT(情報技術)の粋を集めた環境配慮型都市などに重心を移し、設備投資や企業買収を進めている。個々の技術を強くする一方でそれらを束ね、システムやサービスと一緒に提供して価格競争とは一線を画す。付加価値を高めていく経営モデルの一例である。
 サムスンもこうした方向に注目する。同社首脳は「このままでは10年後は中国に負ける」とし、医療やインフラへの参入に意欲をみせる。
 新しい競争が始まりそうだ。日本には液晶パネルや半導体で韓国と競い、苦杯をなめた歴史がある。今後進む産業の転換では失敗をばねに一歩も二歩も他の国に先んじたい。