2011年7月4日月曜日

米ブラウン大学、哺乳類と魚類でかみ方に差

米ブラウン大学の研究チームは、食料を摂取する際の舌の使い方が哺乳類と魚類で大きく違っており、これが双方のかみ方の差につながっているとの研究報告をまとめた。脊椎動物は魚類が陸に上がり両生類や哺乳類などに分かれて進化してきたとされるが、進化の過程でかみ方も変わったことを示せたという。
 研究チームは顎と舌の動きを支える筋肉を、魚類と哺乳類でそれぞれ詳しく分析した。哺乳類は歯でかみ砕くために舌の筋肉を使って最適な位置に食料を移す。魚類は工場の組み立てラインのように、舌の上に食料を載せて口内に引き込み、かんで食べることが分かった。

ナノリボンの作り方考案

米ローレンス・バークレー国立研究所の研究チームは、高性能の電子デバイスの材料に有力視されている窒化ホウ素でできたナノリボンの作り方を考案した。同じく有力な材料と見られている炭素原子が1層並んだグラフェンに似ているが、より有利な電気的、光学的性質を持つと期待されている。
 新手法では窒化ホウ素のナノチューブにカリウムの原子をたくさん詰めて、チューブを裂くようにして開く。厚みが原子1個分で長さ数マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル、幅は数百ナノ(ナノは10億分の1)メートルのナノリボンができる。1番細いナノリボンは、幅が20ナノメートルだった。研究チームはさらに効率的なナノリボン作製法を探しており、窒化ホウ素の研究開発の加速に役立てる考え。

東京海洋大学准教授島田浩二氏――減り続ける北極の海氷

気候変動見極めへ観測
 北極の海氷が減り続けている。2007年9月に過去最低の425万平方キロを記録したが、今年はそれに匹敵するペースで減少している。北極海で何が起きているのか、この分野の研究で日本をリードする東京海洋大学の島田浩二准教授に聞いた。
 ――北極海の海氷は減り続けているというが、今年の夏はどうなる。
 「現在の北極は、厚さが2メートル以上ある古い氷が激減している。せいぜい1メートルぐらいの若い氷が多く、若い氷は解けやすい。衛星による観測が始まった1980年代以降、海氷面積が最小になる必要条件がそろっている」
 ――なぜ海氷が減るのか。
 「1998年のエルニーニョで、暖かな海水がベーリング海峡を越えて北極海に入り込んだ。アラスカ沿岸の氷ができにくく、解けるのが早くなった。海水面が現れると太陽熱で気温が上昇。北極海の北米側に低気圧ができやすくなる。一方、冷たいシベリア側は高気圧が居座るため、日付変更線付近で南風が吹き、さらに暖気を引き込むという仕組みがあるからだ」
 「アラスカ沿岸の氷が解けると、風で氷が動いて不安定になる。氷同士がぶつかって強度が落ちると解けやすくなる。固く凍ったアイスクリームは、カップの近くで解けだすとくるくると回るようになる。それと同じ原理だ。北極海の環境は98年以前とは大きく変わってしまった」
 ――地球温暖化との関係は。
 「地球温暖化は気温の上昇を意味するが、北極の氷が解けるのは海の温暖化の影響だ。北極の氷が減ると、地球を冷やすラジエーターの働きが弱まるので、温暖化を加速する」
 ――毎年のように北極で観測している。
 「96年から09年まで14年連続で航海した。“世界で最も北極海に出かけた研究者”の一人だろう。去年行けなかったのは心残り。当てにしていた韓国の砕氷船アラオンが初航海で、観測機器を十分に積めなかった。今年は7月末からアラオンに3週間乗り込む」
 ――なぜ現地におもむくのか。
 「地球を知りたいという好奇心からだ。子供のころのヒーローは探検家の植村直己だった。氷原とか犬ぞりとかにあこがれた。観測とは文字通り“みてはかる”ことだ。理論研究もいいが、観測は重要だ。最近、自分自身が測器だと感じる。北極海の変化が起きる前と現在を、自分の目で見て比べることができる」
 ――日本の北極研究は。
 「非常に手薄で、4、5年前まで個人がばらばらにやっていた。関係者の呼びかけで日本地球惑星科学連合に北極研究のセッションができ、国際シンポジウムも開くようになった。今年度、北極環境研究コンソーシアムが設立され、ようやく体制が整ってきた」
 「07~08年の国際極年では、北極研究の発表数が南極の2倍あった。日本では南極への関心が高いが、北極周辺には南極にはない気候や生態系がある。氷が減るにつれ、北極航路や海底資源など経済がらみのテーマが脚光を浴びている。もう少し目を向けてもいいのではないだろうか」
記者の目
注目度低い北極 研究体制構築を
 南極観測船「しらせ」が新たに建造され、南極をテーマにした映画・ドラマがたびたび制作されるなど、国民の南極への関心は高い。それに比べて北極は、ながらく米ソ冷戦の舞台だったために注目度が低かった。
 しかし、北半球の気象に北極が与える影響は大きい。気候変動の行方を見定めるため、北極の正体をつかむ必要がある。北極海は日本から2週間の航海で到達できる。外国の砕氷船に頼らなくてもすむ研究体制を構築すべきだろう。

アルツハイマー病、進行早める物質特定――理研など、ペプチドの一種

 理化学研究所などの研究チームは、アルツハイマー病の進行を早める原因物質を特定した。脳の組織に蓄積するペプチド(たんぱく質の断片)の一種で、このペプチドが多いと発症年齢が早まることを確かめた。病気の進行の仕組み解明や新しい治療法の開発につながる成果。詳細は4日、米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)に掲載される。
 理研と同志社大学、滋賀医科大学などの共同研究の成果。
 脳細胞が死んで脳が萎縮するアルツハイマー病は、アミロイドベータ(Aβ)というペプチドが脳に蓄積することが発症原因の1つとされる。Aβは長さが異なる複数の種類があり、これまでは主に「Aβ40」と「Aβ42」が研究されてきた。
 研究チームはアルツハイマー病患者の脳を詳しく調べ、よりアミノ酸の数が多い「Aβ43」というペプチドも脳に蓄積していることに注目。Aβ43が過剰にできるマウスを遺伝子組み換えで作ると、アルツハイマー病の症状が急激に進むことを確かめた。Aβ43は脳にたまる蓄積物の「核」になり、他のAβ40やAβ42を蓄積させやすくすることを明らかにした。

レアアースの巨大鉱床、東大など、太平洋海底で発見

 東京大学の加藤泰浩准教授と海洋研究開発機構などは、太平洋でレアアースの巨大鉱床を発見した。海底にある泥にレアアースが高濃度に含まれ、その量は地上の埋蔵量の1000倍はあると推定。現在レアアースの約9割を中国が産出しており、先端機器を製造する日本は多く輸入して依存している。新鉱床を開発すればレアアースの安定供給につながる。
 成果は4日、英科学誌ネイチャー・ジオサイエンスの電子版に掲載される。
 発見した「レアアース資源泥」は、中央太平洋のハワイの東西に広がる海域と、南東太平洋のタヒチの東の2カ所で、合計の面積は約1100万平方キロメートル。水深は3500メートル~6000メートル。
 船から管を海底におろし、泥を吸い上げるといった採掘方法を想定している。弱酸性の溶液により、泥からレアアースを数時間で簡単に分離できる。
 過去に海底探査で試料として保管されていた約80の地点の地層から分布を特定した。海水中にもともと微量含まれるレアアースがゼオライトなどに吸着し、海流に流されて集中的に積もった可能性があるという。
 泥にはレアアースの中でもモーターに使うジスプロシウムや蛍光体に必要なテルビウムなどの「重希土類」が豊富。現在重希土類の産地になっている中国の鉱床よりも高濃度に含まれる。
 この海域は公海なので、採掘には国際海底機構が鉱床として認定し、鉱区を設定する必要がある。今後、研究チームは鉱床として申請する予定。