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2015年4月21日火曜日

東日本旅客鉄道、薄く軽い太陽電池、福島駅で発電開始

 ■東日本旅客鉄道(JR東日本) 次世代型と期待される有機薄膜太陽電池を福島駅(福島市)に設置し、4月から使い始めた。厚さ0・7ミリメートルで重さは従来の太陽電池の約10分の1。同社研究所や駅で実証試験を進めてきた。信頼性が確認できたため実用に踏み切った。省エネに役立てる。
 改修した福島駅の連絡通路の窓にある合わせガラスの間に挟んだ。1枚のガラスに20センチメートル角で重さ約50グラムの太陽電池を12個並べた=写真。ガラス20枚分の出力は最大260ワット。60ワットの発光ダイオード(LED)照明を5個並べた場合、約5時間点灯できる。
 太陽電池は新素材開発ベンチャーのイデアルスター(仙台市)と高橋光信金沢大学教授らが開発し、倉元製作所が作製した。フラーレン(球状炭素分子)などを使い、主に塗布技術で作った。

2015年4月17日金曜日

太平洋セメント中央研究所第3研究部増田賢太氏――空洞の微粒子、スマホに

断熱に優れ薄型化に貢献
 太平洋セメントは、中が空洞になっている極小微粒子の開発に成功した。原料を溶かした液体を加熱すると、水分が蒸発して微粒子ができる仕組みを応用。高い精度の空洞微粒子を作り出した。スマートフォン(スマホ)の基板に塗布すれば空気膜をつくり、バッテリーの発熱から基板を保護できる。他にも様々な利用法が期待できる。
 中が空洞の新しい微粒子を開発したのは、太平洋セメント中央研究所(千葉県佐倉市)第3研究部資源VCチームの増田賢太リーダーだ。
 微粒子の直径は1~10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル。酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を主成分とするアルミノシリケートなどで作られる。様々な無機酸化物を原料にできる。膜厚は100ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下で、凹凸のない、きれいな球状になっている。
 中が空洞の微粒子で、ここまで小さく平滑な素材を作ることは難しい。一般的な微粒子は二酸化ケイ素を含む頁岩(けつがん)と呼ばれる岩石を砕いて粉にしたものを原料とするケースが多い。
 熱を加えると、中に含まれる有機物が燃えてガスが発生し、風船のように膨らむことで中が空洞になる。ただし、膨らむ過程で穴があいたり、表面に凹凸が出ることが難題だ。穴があくと強度が下がり、性能の劣化につながってしまう。直径も小さいもので20マイクロメートル、膜厚は1000ナノメートル以上の粒子しか作れない。
 「今までにない小さくて平滑な粒子は作れないか」。増田氏が着目したのが「噴霧熱分解法」と呼ぶ製法だった。同製法の特徴は丸くて平滑な微粒子を作り出せること。もともとは、空洞ではなく、中が詰まった粒子を作る製法の一つだ。
 原料を含んだ水溶液を霧吹きのように炉の中にふき込む。炉の内部の熱により、水溶液中の成分が析出する仕組みだ。増田氏は同製法をベースに、炉の熱や水溶液の成分といった条件を変えた。実験当初は条件を変えても中身の詰まった粒子しか作れなかったという。試行錯誤を重ねながら最適な条件を見つけ出し、2014年10月、ついに空洞の極小微粒子を作り出すことに成功した。
 「モバイル機器での展開ができないか」。増田氏は電子材料分野での展開を見込む。例えば、スマホやタブレット端末の電子基板に微粒子を塗膜する。粒子1個あたりの空気の割合は80%以上だ。
 競合他社の粒子は60%以下のため、太平洋セメントの方が断熱性能に優れ、基板を熱から守ることができる。直径が1~10マイクロメートルと小さく、端末の薄型化に役立つ。フィルムに微粒子を混ぜて使うことも可能という。
 将来は船舶や鉄道車両に使うプラスチック、複合材料の添加剤向けも視野に入れる。15年度からサンプル提供し、量産技術の確立にも取り組む。
 太平洋セメントは、セメントを構成するカルシウムやケイ素といった素材の微粒子技術を生かし、新分野への展開を加速している。中央研究所は太平洋セメントの既存事業であるセメントやコンクリート以外に、資源・環境分野で新事業を展開するための研究開発を担ってきた。パワー半導体に使う炭化ケイ素などの研究実績を残している。

炭素素材、水に均一分散、東北大、細胞培養など応用。

 東北大学のアハディアン助教や末永智一主任研究者らは、シート状の炭素素材であるグラフェンを効率良く水に分散させる技術を開発した。人体に有害な薬剤を使わないため、体内に埋め込んで薬を標的の組織に届ける薬物送達システムや、細胞を培養する培地に応用できるという。動物やその細胞で安全性を確かめ、実用化につなげたい考えだ。
 研究チームはグラフェンの材料となる黒鉛と、ウシの血液から取れるたんぱく質のアルブミンを濃度を厳密に調整して混合した。そこに超音波を照射し、均一にグラフェンが分散した溶液を調製した。
 溶液を乾燥すると表面にナノレベルの凹凸が生じた薄い膜ができた。細胞がしっかり接着するため、培地に向くとみている。高分子ゲルに混ぜて導電性を高め、電気刺激で成長が進む筋細胞を育てることも可能という。
 炭素原子が平面に並んだグラフェンは、炭素のかたまりである黒鉛を一層ずつ〓がして作る。従来は効率良くグラフェンを作り、水中に均一に分散させるのが難しかった。

2013年5月16日木曜日

新薬や新材料研究に活用、光・量子ビーム技術融合――文科省新事業

小型加速器も開発
 文部科学省は光技術と量子ビーム技術を融合した新たな研究開発事業に乗り出す。電磁波を利用する光技術と、中性子やイオンを使う量子ビーム技術の知見を統合し、物質の構造や反応などを解明する。小型加速器の開発にも着手。得られた成果を手掛かりに新薬や新材料の開発につなげる。
 同省は従来、光技術と量子ビーム技術を別々に研究してきた。光を増幅したレーザーは情報通信や建築加工に応用。量子ビームは物質・材料の解析に有効だ。ただ近年は両技術の役割が重なりつつあり、融合の必要性が指摘されていた。
 今後3~5年かけてレーザーのほか、中性子やイオン、電子、放射光など複数の光・量子ビームを利用し、新原理の解明を目指す。事業数は3~6件程度で1件あたり年間最大1億円を投じる。5月下旬に委託先を決め、6月末にも事業を始める。
 レーザーや放射光などのそれぞれの波長やパルス幅の違いを利用し、物質の反応を解析する事業などを想定。人の視覚システムが解明できれば新薬開発が期待できる。光合成の過程を解明できればエネルギーの変換・貯蔵のための超微細部品の研究開発に役立つ。
 短時間で大きなエネルギーを発するパワーレーザーで超高圧状態にした上で、電子で作った放射光を当てて物質の反応を解析する事業も想定される。従来の技術では実現できない超高圧下の新たな物質材料が創出できる可能性がある。
 文科省は量子ビームの新たな加速器の開発も始める。従来の加速器は茨城県東海村の「J―PARC(大強度陽子加速器施設)」や兵庫県播磨科学公園都市の「SPring―8(大型放射光施設)」など大型の施設が多かった。研究室規模で使用できる小型加速器を開発する。
 光科学施設を含め他の施設に持ち運び可能な小型加速器を作り、光・量子ビーム技術の融合を効率的に進める。メーカーなど産業界の研究者も容易に利用できる解析ソフトを備えたシステムも開発する。このほか各施設の共用や人材交流も進める。先端的な光技術・量子技術を複数備える研究者を育成し、イノベーション創出を強力に推進していく方針だ。

2013年1月31日木曜日

日本ガイシ、今春ウエハー、セラミックス技術活用、LED・スマホ照準。


 日本ガイシが祖業のセラミックス分野で培った材料技術を武器に、ウエハー事業に今春参入する。狙うのは、発光ダイオード(LED)光源やスマートフォン(スマホ)向けの電子部品などの成長市場だ。排ガス浄化用セラミックスなどの自動車関連に依存する事業構造の見直しに向け、新事業の育成を急ぐ。
 「研究部門が(先端素材である)窒化ガリウムのいいウエハーを作った。生産技術や営業など全社の力をインプットして事業を成功させる」。加藤太郎社長は意気込む。
 窒化ガリウムはLED素子の発光効率を飛躍的に高める素材として注目されている。量産は難しいとされてきたが、同社はセラミックスなどで培った材料技術を発展させた。溶かした半導体材料から結晶を成長させる「液相成長法」を応用し、高品質のウエハーを安価に得られる独自製法を確立した。
 LED研究で著名な名古屋大学大学院工学研究科の天野浩教授らの協力を得て、高輝度化が困難とされる緑色LEDの素子でも、発光効率を既存製品の2倍に引き上げられることを確認した。プロジェクターの光源の小型化や省電力化が可能になるほか、タブレット(多機能携帯端末)やディスプレーのバックライトとしても有望だ。
 3月末までにウエハーを月1000枚以上(2インチ換算)量産できる体制を整備。LED素子メーカー向けに供給する。
 窒化ガリウムウエハーは電力損失が少ない点にも注目が集まる。2014年までに大口径ウエハーの量産体制も整え、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)、産業用機械などのパワー半導体の中核材料として供給する計画だ。19年3月期に窒化ガリウムウエハーで売上高100億円を目指す。
 同社は足元では、世界的な排ガス規制強化を追い風に自動車の排ガス浄化用セラミックスが好調だ。ただ、電力部門は電力会社の設備投資抑制で電力用碍子(がいし)が振るわず、NAS(ナトリウム硫黄)電池も11年の火災事故から新規受注がゼロ。全社の営業利益のほとんどは自動車関連が稼いでおり、ウエハーに寄せる期待は大きい。
 ウエハー戦略では、スマホの成長にうまく乗りたいとの思惑もある。このほど電波を特定の周波数ごとにふるい分ける「SAW(表面弾性波)フィルター」向けに、2種の材料を接合した「複合ウエハー」を試作した。
 「材料を磨き、張り合わせるという、当社のコア技術で強みを発揮できる」(加藤社長)としてさらに高性能化を進め、窒化ガリウムとは別に事業化の準備を進めている。
 新事業立ち上げとあわせて、研究開発投資も増額する。今後3年程度で現状より3割近く多い年150億円規模に引き上げる。ウエハー事業など仕掛かり中の案件に投資するとともに、新テーマの創出・育成を強化する。「ここ数年、テーマを厳選していた」(加藤社長)という研究開発の方針を積極策に転換し、収益基盤の強化を急ぐ。

2013年1月30日水曜日

アラミド繊維―帝人、車向けも幅広く開拓

 帝人が力を入れる高機能繊維のひとつ、アラミド繊維。強度や耐熱性に優れ、火星探査機のパラシュート部品から消防服まで、幅広く使われる。世界の自動車市場の拡大に伴い、ブレーキ摩擦材などでの採用増加も期待がかかる。米デュポンと肩を並べるメーカーとしてナノ(10億分の1)ファイバー化などで技術を磨き市場開拓を進める考えだ。
 2012年8月、地球から遠く離れた火星で、アラミド繊維が活躍した。米航空宇宙局(NASA)が打ち上げた探査機キュリオシティが大気圏を突っ切り、地上の9倍ある重力に耐えたが、そのパラシュートに使われたのだ。
 パラシュートは直径約15メートルで約60キログラムある。探査機本体と、パラシュートをつなぐサスペンション・コード80本に、アラミド繊維が採用された。これは帝人の「テクノーラ」だ。
 アラミド繊維の世界需要は約7万トン(11年、同社推定)。このうち7割を強度の高いパラ系繊維が占め、残りは耐熱性のメタ系だ。帝人はどちらの製品群も取り扱う。パラ系の世界市場では米デュポンとシェアを5割ずつ分けあう2大メーカーの地位を築いており、NASAの採用は品質への信頼を物語る。
 帝人は繊維開発の歴史のなかで高分子をコントロールする技術などを蓄積してきた。アラミド繊維では既存用途だけでなく、技術開発で市場開拓を進める。キュリオシティのような宇宙用途に限らず、新興国ではまだ性能が低いとされる消防服でも日々、実験を重ねて機能を高めようとしている。
 先端の技術力をそそぐ有力な領域が自動車だ。昨年発表した「アラミドナノファイバー」はそのひとつ。直径が数百ナノメートルで、高分子製造と均一な繊維加工の技術を使って開発に成功した。極細糸で薄いシートなどにすれば、高温に弱い樹脂製品と置き換えられる。狙う用途はリチウムイオン2次電池のセパレーター。現在はポリエチレン製フィルムが主流だ。
 「世界で自動車産業が発展する。アラミドも期待できる」と大八木成男社長は言う。アラミドの世界需要は20年に12万トンと予想され、特に自動車関連の市場が膨らみそうだ。現在でも、パラ系用途の4割はブレーキ摩擦材とタイヤ補強材だ。
 ほかに、光ファイバーケーブルの補強材としても使われ、昨年にケーブルの耐圧性が3~5倍に高められるテープ製品も生み出した。素材をどう顧客ニーズに合わせた形に変えるかが、重要な課題となってきている。
 アラミド繊維事業を始めたのは1972年。長時間の耐熱性、難燃性があり高温でも物性が落ちない製品の生産からだった。帝人は70年代前半、レーヨンから撤退するとともに、フィルムや医薬の分野に進出し、経営を多角化していた。
 弾みがついたのが、2000年のオランダ・アコーディス社の事業買収だった。爆発的とはいえないが、徐々に性能が認められ市場が広がるなかで、オランダなどで能力増強へ投資も続けた。
 順風ばかりではない。アラミド繊維などの高機能繊維・複合材料部門は、13年3月期の売上高が1200億円、営業利益は5億円の見通し。それぞれ前期の12%減、92%減となる。欧州などの景気後退のなかで政府などによる防弾、防護用途への支出抑制が響いたようだ。景気の影響を受けやすい用途もある。
 ただ、医薬事業が中心となっている帝人にとって、世界で存在感のあるアラミドは多角化の重要な柱。培った技術を存分に発揮し、焦点を絞った開発で成長につなげる考えだ。

東レ、コレが自慢のナノ技術、世界最細の繊維開発、直径150ナノ。

 東レは29日、直径が150ナノ(ナノは10億分の1)メートルと世界で最も微細な繊維(ナノファイバー)を開発したと発表した。高機能の衣料品やフィルター材料などへの利用を見込む。
 開発したのは1本の繊維が長い「長繊維」のポリエステルナノファイバー。ポリマーを糸に加工する際の押し出し口の形や圧力を調節し、従来の最細だった直径300ナノメートルから半減させた。一般の衣料用繊維に比べて直径が100分の1の大きさだという。
 開発したナノファイバーを織物に使うと、重量あたりの表面積が大きいため、汗を多く吸収する。フィルターにすると、繊維の隙間が小さくなるため、細かいものまで分離したりできる。
 半導体や液晶の工場で床を掃いて細かなチリやホコリは除去できる用途も見込む。アパレルなどにサンプル出荷する。

透明導電フィルム、日立化成が量産、タッチパネル用、秋から。

 日立化成は29日、タッチパネル向けの透明導電フィルムを今年10月から量産化すると発表した。スマホ(スマートフォン)やタブレット(高機能携帯端末)向けに販売を進め、2015年度には年60億円規模の売上高を目指す。
 透明導電フィルムは米カンブリオス・テクノロジーズ(カリフォルニア州)と共同開発した。日立化成の感光性フィルムとカンブリオスの銀の導電インクを活用し、折り曲げることができるフィルムを開発した。
 日立化成は山崎事業所(茨城県日立市)で月産数十万平方メートルの生産設備を稼働させている。サンプル出荷を進める中で、一定の受注が見込めると判断。生産能力を拡大し、量産化に乗り出すことを決めた。
 タッチパネルを巡っては、スマホやタブレットに加え、パソコンやテレビなどで今後、採用機器が増えるとみられる。ディスプレイサーチ(東京・港)の調査では、15年のタッチパネル市場は12年比で1・7倍に拡大する。

東レ、コレが自慢のナノ技術、新フィルム、絵柄転写円滑、硬さ異なる樹脂を積層。

 東レは家電や自動車の部品に絵柄や文字を転写する「離型フィルム」の開発品を発表した。フィルム上に印刷層の膜をつくったり、この膜を部品に貼りつけたりする工程が、通常の離型フィルムを使うより円滑にできるという。サンプル出荷を始めており、年度内の正式販売を目指す。
 東レはナノ(10億分の1)レベルの高分子技術を応用。薄いフィルム内に柔らかさが異なる樹脂を積層させた。
 印刷会社はこのフィルムを使えば、塗膜状の印刷層をつくるために溶剤を揮発させる工程で、セ氏80度でも耐えられる。ポリエチレンテレフタレート樹脂で製造したフィルムの場合、50~60度での作業が必要だ。「製造スピード向上につながる」(東レ)とみる。
 さらに、部品会社が新開発フィルムを使って部品に絵柄を貼りつける場合、120度で可能。170度にする必要があるポリカーボネート樹脂などと比べ、熱に弱い部品も取り扱いやすい。
 スマートフォン(スマホ)など小型機器をまず狙う。2015年度に売上高で10億円以上が目標だ。

送電ロス極小の超電導線、古河電工、30年耐久確認。

 古河電気工業は29日、27万5000ボルトの高電圧送電が可能な超電導線の実証実験で、30年間の送電にも耐える耐久性能を確認したと発表した。超電導線は送電時の電力ロスがほとんどなく、スマートグリッド(次世代送電網)のカギとなる技術。高電圧を流す地中送電線などへの導入を視野に開発を進め、2020年前後の実用化を目指す。
 実証実験は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などとの共同で、古河電工の中国子会社で昨年から実施していた。長さが30メートルの超電導線に通常の送電環境下で30年分にあたる高負荷を与えて実験をしたが、部分放電などの製品劣化は見られなかった。
 実験した超電導線は1回線で大規模発電所1基分にあたる150万キロワットの送電が可能。従来のケーブルでは3回線が必要だったが、回線数の削減により、敷設コストは半分程度。また送電ロスも4分の1程度に抑えられるという。
 古河電工は国内の高圧送電網が更新時期を迎える20年前後の実用化を視野に生産技術の開発などを進める。また新興国などの海外インフラへの展開も模索していく。

2013年1月29日火曜日

大同特殊鋼、プリウスの「魔法の粉」増産――スマホに供給へ


新ライン建設、成長分野に、磁力付き合金 HV基幹素材
 国内新車販売でトップを走るトヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「プリウス」。この人気車種で使われている大同特殊鋼製の特殊な鉄粉にひそかな注目が集まっている。燃費を良くし製造コストも削減できるためHVには欠かせない素材となっており、新たにスマートフォン(スマホ)への供給も狙う。大同特殊鋼は4月にも増産を始める。韓国など海外勢からも引っ張りだこの“魔法の粉”とは一体何なのか。
 大同の名古屋市内の「築地テクノセンター」。ここにあるビル内の応接室の入り口にはハングル語の案内板がかかっている。国内の自動車メーカーの関係者ばかりではなく、韓国からのビジネスマンも増えているからだ。お目当ては同拠点内で生産している金属製の粉末だ。
 この鉄粉の名称は「金属製磁性粉末」。大同が開発した。鉄にシリコンを3%程度混ぜた磁力付き合金で、直径0・1ミリメートルほどの粉状に加工されている。
 トヨタのプリウスにはバッテリー電圧を上げる電磁石に似た装置(リアクトル)が搭載されているが、昇圧性能を左右する鉄心はこの鉄粉によってつくられている。現行の3代目プリウスは最大電圧が先代の500ボルトから650ボルトへと引き上がった。これは新たなリアクトルがあることで昇圧機能が高まったため。結果としてモーターの小型、高出力化が可能になった。さらにモーターの駆動電流も低減できるため、インバーターの発熱量を抑え部品の小型化が進んだという。
 もともとトヨタは大手鉄鋼メーカーの電磁鋼板を加工することで、リアクトルの鉄心をつくってきた。ただ、その場合は板を切り抜く際に無駄が出るほか組み立てが煩雑。鉄粉ならば金型に入れてプレス成形するだけでよく「3分の2のコストですむ」(大同特殊鋼の大河内敬雄・粉末工場長)という。
 トヨタは、2001年、大同の特許資料からこの技術を“発見”。HV専用鉄粉の開発を持ちかけた。
 とはいえ、もとはパソコン回路向けを想定した技術だ。磁力のバランス、耐久性、耐熱性などHVが求める条件をクリアするには壁があった。プレス成形しても壊れにくい粉の形状にし、熱を帯びないようにひとつひとつの鉄粉を特殊材で覆う。01年に始まった共同開発は途中の中止期も含め、実用化のメドがたったのは08年だった。
 大同の鉄粉を使ったリアクトルは安いだけでなく、磁力特性も板材製より向上している。結果としてリアクトル自身を小さくできるようになったほか、使用電流も少なくすむためモーターなど周辺部品の電線コストも抑えられる。トヨタにとっては原価ダウンと燃費改善という、HVシステムの根底を支える基幹素材だ。09年発売の現行プリウスから全面採用された鉄粉は11年末発売の小型HV「アクア」でも使われている。
 大同の次の課題はさらなるコスト改善とライバルとの競争だ。トヨタは14年度にも次期モデルのプリウスを発売する予定。システム価格をさらに引き下げる方向で部品の最終選定を進めている。JFEスチールなど他の製鉄会社も挽回を目指し新技術の開発を急いでいるもよう。大同特殊鋼は「質の良さをアピールしたい」(大河内工場長)と勝負に挑む構えだ。
 12年はトヨタの国内販売車のうち約4割がプリウスなどのHVだったという。量産効果がコストダウンの最大要因とされるHVシステムだが、今までにない素材や部品の採用もそこに一役買っている。
 最近は他の国内の自動車メーカーのほか、韓国や欧米メーカーからも問い合わせがあるほか、スマホやタブレット端末への供給も始めようとしている。
 大同の粉末はスマホにも重要な素材になり得る。スマホなどの電子機器の電子回路では電圧変換などに使う「インダクタ」と呼ばれる部品を搭載している。大同の粉末を採用したインダクタは酸化鉄が主成分の従来の素材に比べて電流を流しやすい。電圧変換部品であるインダクタのサイズを小さくしてスマホ自体も小型にできる利点がある。
 粉末事業にアクセルを踏む大同。「築地テクノセンター」内の工場に金属粉末の生産ラインを建設中だ。HVやスマホ向けのラインとし、4月には増産を始める。名古屋市内の拠点に約10億円を投資。生産能力を年1万5000トンと従来比で5割程度増やす。
 大同は「まだ社内では小さなビジネスにすぎないが、成長分野だ」(同社幹部)という。粉末事業は連結売上高4500億円(13年3月期見込み)の1%強にとどまる。自動車向け中国事業などが伸び悩む中、特殊鋼低迷の中で成長する数少ない事業だ。
 大同は粉末事業を15年3月期の事業売上高で90億円と現状比5割増やす計画だ。クルマからスマホへ。夢の素材は大きく花開くのか。プリウスに端を発した粉末の波及効果は計り知れない。

ナノチューブ束ねて糸に、帝人、研究向けに出荷、電子機器の配線用。

 帝人はナノテク炭素材料のカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を束ねてできた糸を量産する技術を開発した。金属並みに電気をよく伝え、電子回路の配線で一般的な銅の30倍の強度がある。研究向けにサンプル出荷を始めた。電子機器の配線などへの応用を目指す。成果は米科学誌サイエンスに発表した。
 糸のように長いナノチューブ繊維を開発したのは帝人のオランダ子会社であるテイジン・アラミドと、米ライス大学や米空軍の研究所など。
 カーボンナノチューブを強い酸に溶かし、その液を細い穴が開いたノズルを使い水槽に流し込んだ。直径8~10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのナノチューブ繊維が毎分10メートルの速度でできた。まず約500メートルまで作れた。
 防弾チョッキなどに使うアラミド繊維の製法を応用し、電気や熱の伝わり方を高め、実用レベルを達成した。

曲がるタッチパネル、産総研、実用化急ぐ、カーボンナノチューブ活用。


 産業技術総合研究所は、曲げに強いタッチパネル=写真=を試作した。代表的なナノテクノロジー(超微細技術)素材のカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を塗ることで、折り曲げても電気を流せる透明フィルムをパネルに使った。丸めて持ち歩けるタッチパネルの実現につながる成果。耐久性などを高め、早期の実用化を目指す。
 新しい導電フィルムはカーボンナノチューブのインクを印刷技術で表面に印刷して作る。高温や真空の状態で製造する現行のインジウムとスズの酸化物を使うフィルムに比べ、製造コストを大幅に減らせるという。衝撃や曲げにも強い。
 このフィルムを隙間ができるようにして2枚張り合わせたタッチパネルを試作。曲げた状態でペンでパネルをなぞり、ペンの軌跡がディスプレーに表示できることを確かめた。

新ナノ炭素、量産技術、NEC、燃料電池の性能向上、電気ためやすい円すい状。

 NECは電池の性能を引き上げるとして注目のナノテク炭素材料で新たな素材の量産技術を開発した。これまで応用されていないユニークな円すい状で、電気をためやすい。燃料電池や蓄電部品の性能を大幅に高める。微細な構造に薬剤を閉じ込めて患部に効率よく送り込むDDSにも応用できる見込み。今後3年間で20以上の企業や研究機関に本格的に売り込む。
 量産するのは炭素原子が円すい状につながった材料。大きさは直径2~5ナノ(ナノは10億分の1)メートル、長さ40~50ナノメートル。NECは牛の角(ホーン)に似ているとして「カーボンナノホーン」と呼ぶ。
 NECは15年前に発見したが、高純度で大量に生産する技術の確立は難しかった。近年、燃料電池やDDSなどの用途が期待され始め、ナノ炭素材料の安全性の検証も進んでいることから、技術開発を急いだ。
 新素材は同じ重さならばナノ炭素材料で知られるカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)やフラーレン(球状炭素分子)と比べても表面積が大きい。燃料電池の活性炭の代わりに使うと、取り出せる電気の量を2~3割増やせる。
 高い圧力をかけなくても室温で炭素の固まり(黒鉛)を強い炭酸ガスレーザーで砕いて簡単に作る方法を見つけた。直径10センチメートル程度の固まりから純度95%で安定生産でき、産業応用に道を開く。
 レーザーの強度や炭素の固まりを回す速さを調整し、1日1キログラム以上生産する技術を確立した。数千万円を投じ、筑波研究所(茨城県つくば市)に製造設備を整えた。
 カーボンナノホーンは同社の飯島澄男特別主席研究員らが1998年に発見した。同社が構造や製造に関する基本特許を取得している。
 サンプル価格は1グラム当たり4万5000円。大量購入の場合には数百円台での提供を目指す。関連売上高は10億円規模が目標という。

2013年1月24日木曜日

超電導ケーブルシステム、住友電工、工場で実証運転、配電網と接続、信頼性を検証




 住友電気工業は22日、大阪製作所(大阪市)で超電導ケーブルの実証運転を始めたと発表した。ケーブルを工場内の配電網と接続してシステムの信頼性などを検証。改良やコスト削減につなげる。電力の供給側の送配電網での超電導ケーブルの実験は進んでいるが、企業の工場といった需要家側で実証試験を実施するのは初めて。
 銅ケーブルは一般に送電ロスが5%発生する。超電導ケーブルを使うと送電ロスを3分の1から2分の1に減らせる。大容量の電力を長距離送る場合ほど省エネ効果が得られるという。データセンターや鉄鋼工場、自動車工場などの基幹ケーブルで利用を見込む。
 企業の省エネ意欲が強いため、大規模な設備投資が必要な電力会社の送電網向け超電導ケーブルよりも、需要が早く立ち上がるとみている。実験成果をもとに企業に提案を積極化し、5年以内の商業化を目指す。
 大阪製作所に導入したシステムは、交流の超電導ケーブル70メートルを敷設。高低差による影響を検証するため、ケーブルの一部は高さ18メートルの建物の壁面に配置した。マイナス約200度に冷却した液体窒素をケーブル内に循環させ、超電導の状態とする。投資額は3億円。
 住友電工は「ビスマス系」と呼ばれる金属材料で強みを持ち、世界で相次ぐ実証試験向けに材料を供給している。昨年10月には東京電力などと共同で電力会社の送配電網に超電導ケーブルをつなぐ国内初の実証試験も始めている。欧州での送電網の実用化に向けた実験にも超電導線を供給している。

5秒で鏡から透明に、調光ミラーシート、切り替え早く、産総研試作。

産業技術総合研究所は23日、窓ガラスに貼って太陽光を遮り冷房効果を高める新型の調光ミラーシートを開発したと発表した。水素ガスを利用し鏡になったり、透明になったりする。5秒で切り替えられる。電気で切り替える従来の調光ガラスに比べて素早い。調光する薄膜も薄く製造コストの大幅削減が期待できる。
 試作した調光ミラーシートは縦37センチ、横26センチ。透明シートの上にマグネシウム合金とパラジウムの2層からなる調光薄膜をつけ、ガラスに貼り付けた。電気分解用の高分子膜に3ボルト程度の電圧をかけ、空気中の水蒸気から水素を発生させて、ガラスと調光薄膜の間にある0・1ミリメートル程度の隙間に流すと、鏡の状態から透明に変化する。
 試作品は約5秒で鏡の状態から透明に変わる。同じ大きさの従来の調光ガラスは30秒ほどかかっていた。1メートル角の場合は10分程度必要だったのが約30秒に短縮できる。
 また従来は調光層が5層あるのが一般的だが、これを2層にした。全体の厚みも100ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下と約10分の1になった。
 試作品は透過率が約40%だが実験室レベルでは60%を達成した。今後、透過率を70%以上に高めて自動車のフロントガラスなどへ応用を目指す。

奈良先端科学技術大学院大学准教授中嶋琢也氏―省エネ調光ガラス実現

 紫外線が当たると青色になり、電気を流すと無色になる。調光ガラスと呼ぶ特殊なガラスを、従来より10分の1以下の消費電力で実現したのが奈良先端科学技術大学院大学准教授の中嶋琢也(35)だ。優秀な若手研究者と周囲からはみられているが、本人の研究に対する姿勢は人一倍厳しい。ビルの空調効率などを上げ、大幅な省エネ実現につなげるのが目標だ。
 中嶋が扱うのは、電気と光に反応して色が変わる「フォトクロミック材料」だ。分子構造などを工夫して様々な性能を引き出す研究競争が繰り広げられているホットな分野だ。
 色の変化をもたらすのは「ターアリーレン」という分子だ。これを使って横1センチメートル、縦4センチで厚さが2ミリのガラスを作製。実験すると、電気を流して50秒ほどで青色から無色になった。電気を流すと雪崩が起きたように、次々と分子の反応が連鎖する。これが今回の性能を実現した要因だ。従来は電子1つに対して1つの分子が反応するだけだった。
 「5つ目くらいの分子で、考えていたような結果が出た」。中嶋は今回の研究成果を淡々と振り返る。微小な分子が多数集まった超分子に関する知識を生かし、実験がもくろみ通りにいったからだ。
 中嶋は学部から大学院に飛び級で入学。博士課程も期間を短縮し、わずか25歳で学位を取得するなど研究者としてエリートコースを歩んできた。今回もそつなく研究をこなして成果を出したと思われそうだが、中嶋は「楽をした研究はあまり成果が出ない」と断言する。冷静な受け答えの中に、強い執念を感じさせる。
 中嶋の研究手法は明快だ。原理を追究し、解明した理論に沿って新材料を合成する。材料の物性を評価して理論との整合性を詰める。たとえ優れた材料ができても手放しで喜ぶことなく、「なぜそうなるのか」と突き詰める。原理の追究と実験をひたすら繰り返す日々で、単純作業も多い。しかし、証拠を1つ1つ挙げて犯人を追い詰める警察小説のような過程が好きだという。
 2004年、九州大学で学位を取って間もない中嶋は、隣の研究室にいた河合壯の奈良先端大教授就任に合わせて一緒に移った。「学年トップクラスの最優秀な学生。自身がカバーしきれない超分子という専門分野を持っている」と中嶋に目を付け、引き入れた。
 河合の専門は光化学で、約20年前に光で着色したフォトクロミック材料が、電気を流すと無色になるのを見つけた先駆者だ。中嶋は光を扱う物理化学が苦手だったが、論文を必死に読み込むなどして河合に食らいついた。それを大学院時代に取り組んだ超分子に関する知識と融合させた。
 中嶋は「野球でいうと、今のところコツコツとヒットを打ち続けている感じかな」とこれまでの成果を分析する。ただ、「いつかホームランを打ってやる」との情熱も胸に秘めている。

タムラ製作所、基板接続用はんだ――低圧処理、部品傷めず

 電子材料などを手掛けるタムラ製作所は昨年からスマートフォン(スマホ)に使うプリント基板同士を接続するはんだを販売している。「導電フィルム」と呼ぶ薄い膜を基板に挟み込んで接続する従来手法に比べて10分の1以下の圧力で済む。基板上に載せる電子部品を傷めるリスクを抑えられる。
 「スマホは年々高機能になり、基板に載せる部品の間隔がどんどん狭くなっている。少ない圧力で済む新製品は確実に需要が見込める」。タムラ製作所の電子化学事業本部の開発本部でマネージャーを務める土屋雅裕氏は新しいはんだの利用拡大に自信を示す。
 開発したはんだは、硬いリジッド基板と薄く曲げられるフレキシブル基板の2つのプリント基板を接続して電気を通すのに使う。リジッド基板は主要な電子部品を載せるメーンボードの役割を果たし、フレキシブル基板はカメラの複合部品(モジュール)などを載せる。
 リジッド基板にはんだを塗り、フレキシブル基板を上から重ねる。加熱圧着装置でセ氏190度以上で熱しながら10~15秒程度の時間で圧力を加えると、はんだが溶けて基板が接合する。
 はんだには10~34マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの金属の粉末に潤滑剤となる樹脂粉末を混ぜている。金属粉末はスズやレアメタル(希少金属)の一種であるビスマスを混ぜ合わせている。
 タムラ製のはんだには金属粉末が溶けると基板の導線の部分に集まる性質を持たせており、樹脂粉末は導線の間の絶縁部分に集まる。はんだが冷えて固まると、導線の部分は金属粉末を通じて電気が流れ、導線の間は絶縁される。
 タムラ製は金属粉末と樹脂材料の両方を自社で手掛けている。粉末の粒子の大きさや金属と樹脂の配合の見直しで、複雑な接続構造を実現した。
 基板の接続には導電フィルムを挟み込む場合が多い。フィルムはニッケルなどの樹脂粉末に金属をめっきしたものをちりばめており、基板の間に挟んで圧力をかけると、導線の部分で金属粉末を押しつぶすようにして固定する。
 タムラ製によると同一条件で比べた場合、導電フィルムを使った接合には10メガ(メガは100万)パスカルの圧力が必要なのに対し、はんだは1メガパスカル以下の圧力でつなげられるという。少ない圧力で済むため、基板に載せている電子部品を傷めたり、取れたりする可能性を減らせる。
 接続作業にかかる時間も減らせる。導電フィルムでは基板同士の位置などを決めるため、圧力をかける前に低い温度や圧力で一度フィルムを取り付けて位置などを確認する「仮止め」工程がある。はんだでは接続したい範囲に塗るだけで済むので仮止めの一連の工程を減らせる。
 タムラ製ははんだなどの電子化学材料部門を今後の成長事業と位置付けている。2012年3月期に164億円だった電子化学材料全体の売上高は13年3月期には193億円になる見込みだ。
 基板接続に使うはんだはスマホのほかにデジタルカメラなど小型の電子機器での利用を見込み、圧力をかける時間がより少なくて済む製品や低い温度で溶ける製品などの開発も進めていくという。
製品の概要
▼製品名 SAM30―401―11
▼用 途 スマホなどのメーン基板と柔軟なフレキシブル基板の接続
▼特 徴 従来の導電フィルムの10分の1以下の圧力で接続できる
▼時 期 2012年から量産

2013年1月23日水曜日

カシオ、Gショック3割軽く、樹脂バンド、変色も抑制。

 カシオ計算機は主力の腕時計「Gショック」シリーズのバンド部分などに使う素材で本体重量を従来より3割軽くできる新素材を開発した。国内の素材メーカーと衝撃などを受けても摩耗しにくい樹脂を共同で開発。汗などによる変色も抑えたという。2012年度の秋冬製品から一部製品で採用を始めており、13年度から本格的に採用機種を広げる。
 新たに開発した素材は「ファインレジン」。メガネのフレームなどで使用実績がある強度に優れたポリアミド樹脂をベースに開発した。樹脂に色素を混合したうえで固形化し、射出成型機を使って腕時計向けに加工をするため、表面が退色することがない。新素材は紫外線による変色も抑えられるほか、肌への負担も軽減できるという。
 Gショックのバンド素材はステンレスが中心で女性向けなどでは軽量化が難しかった。プラスチック素材のものも、腕時計と同じ色を後から塗装するため退色しやすいなどの難点があった。
 カシオでは12年秋冬製品で「Gショック」と女性向けの「ベイビーG」の一部製品で採用を始めた。女性向けの腕時計に採用した場合の重量は54グラムとステンレス製より3割軽くなるという。
 腕時計のバンド部分は汗など湿気を含むほか、ステンレスなどの金属アレルギーを懸念する女性も少なくない。樹脂を使うことでかぶれなどを軽減できる。現在、男性用腕時計はバンドの一部分への採用にとどまっているが、今後は100%新型素材を使用した製品開発も進めていく。

2013年1月22日火曜日

リチウムイオン電池、寿命4倍、蓄電量維持――ダイソー、接着剤を開発。


 ダイソーはリチウムイオン電池の寿命を4倍以上に延ばす電極用接着剤を開発した。電気を生み出したり導電性を保ったりする物質を電極に付着させる接着剤は酸化などの影響で力が弱まる。同社が独自開発したアクリル系樹脂は酸化に強く、充放電を繰り返しても電池の容量が落ちにくくなる。2014年をメドに販売を始め、エコカーや大型蓄電池向けの需要を開拓する。
 リチウムイオン電池は、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで電池の機能を発揮する。両電極には電気を生み出す「活物質」や電子を通すカーボンなどの「導電助剤」を「バインダー」と呼ぶ接着剤で電極に付着させる。活物質が電極から落ちにくくすることが電池の延命につながる。

 ダイソーは分子構造を工夫して新しい樹脂を開発した。セ氏60度の高温下で、それぞれ1時間かけて充電と放電を繰り返す試験では、従来のバインダーが116サイクルで容量維持率が10%落ちてしまうのに対し、新開発の樹脂は468サイクルまで延ばせたという。

 バインダーは発電時に酸化・還元反応にさらされるため、高い接着力が必要になる。特に酸化反応の起こる正極で、はがれやすく、これまでは分子構造の強固なポリフッ化ビニリデン(PVDF)を使った溶液が利用されてきた。

 PVDFを使ったバインダーは有機溶剤を媒体にするため、生産には防爆設備などが必要になり、生産コストが高くつく。ダイソーが開発したバインダーは、乳化重合という方法で水の中でアクリル系樹脂を合成する。安全かつコストを抑えて生産できるという。価格はPVDFを使ったバインダーと同水準になるとしている。

 富士経済(東京・中央)によると正極用バインダーの世界市場は16年に10年比3倍超の259億円に拡大する見通し。PVDFの最大手はクレハで、世界市場の7割を握る。ダイソーは電池メーカーなどと組み、エコカーや企業、家庭用大型蓄電池向けの新たな需要を開拓、20%程度のシェア獲得を目指す。