シャープ 京大と省エネ住宅実験 日東電工 阪大に有機EL研究所
環境・エネルギーやエレクトロニクス産業が集積する関西で産学連携の先端研究が加速している。シャープや京都大など25機関が大規模な省エネ住宅の実証実験に乗り出すほか、日東電工などが大阪大に有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の研究所を設立する。これまで一般的だった人的な交流にとどまらず、双方が深く関与した長期的な取り組みが目立つ。連携で先端技術が開花すれば関西経済の浮揚にもつながりそうだ。
京都府と大阪府、奈良県にまたがるけいはんな学研都市で今秋にも省エネ住宅の普及をにらんだ産学連携の実証実験が始まる。太陽電池と蓄電池、電力使用を制御するシステムを組み込んだモデル住宅を10戸建設、実際に人が住み込んで電力の削減効果を検証する。
25機関が参加
実証実験はシャープ、オムロン、京大、同志社大学、京都府のほか関西電力など25機関が参加する「けいはんなエコシティ次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト推進協議会」が中心となって進める。
省エネ住宅は東日本大震災以降に急速に関心が高まっているが、実際にどの程度のエネルギー削減効果が出るかは未知数の状況。実証実験ではこうした実際のデータの不足を補うと共に、生活に不便を感じることなく電力消費を減らせるシステムの構築を狙う。スマートグリッド(次世代伝送網)の核にしたい考え。
阪大では、吹田キャンパス(大阪府吹田市)でこのほど完成したテクノアライアンス棟に企業の研究所設立が相次ぐ。日東電工の「先端技術協働研究所」は1540平方メートルの延べ床面積を持ち、クリーンルームなどを含む多数の実験設備を導入して20人体制で秋から本格稼働する。
「研究開発の幅を広げたい」。同社の藤村保夫研究開発本部長は狙いを語る。大学との共同研究は従来も取り組んできたが、本格的な研究施設を大学内に設けるのは初めて。「腰を据えて連携を進める」と意気込む。
研究対象は薄膜太陽電池や、照明やディスプレー技術として有望視される有機ELの製造プロセスの開発。多彩なシート材料を持つ同社の技術に大学の知識を融合し、高効率の生産技術開発や製品の性能向上を目指す。
カネカも同棟内に「基盤技術協働研究所」を1日に開設した。阪大教授や院生も加えた11人体制で7月中旬以降に本格稼働する。有機EL、高効率化合物太陽電池など4つのテーマについて基礎研究を進める。浅田正博RD推進部長は「根源的競争力は基盤技術。阪大の知識や設備を生かし新しい原理の発見につなげたい」と期待を寄せる。
開発の加速狙う
パナソニックやシャープなどが本社を置く関西は新エネや省エネ、ディスプレーの関連産業が集積する。大学や研究機関の持つ専門知識やノウハウを取り込りこむことで、企業は先進的なシステムや材料、生産技術の開発の加速を狙う。
神戸市が企業誘致を進めるポートアイランド地区では、理化学研究所が富士通と共同で開発を進める次世代スーパーコンピューター「京」が来年11月にも本格稼働する見通し。理研は、京について稼働当初から民間企業にも利用を開放することを決めている。
スパコン研究者の育成を目指す兵庫県立大学のシミュレーション学科も京の隣の建物に位置する。大学、企業の研究者が相次ぎ訪れることとなり、新たな産学連携の拠点として注目を浴びる可能性もある。
【表】関西の産学連携の主な事例
実施主体 研究開発のテーマ
京都大学、大阪ガス 間伐材を利用した冷暖房システム
京都大学、トヨタ自動車、パナソニックなど リチウムイオン電池などの次世代蓄電池
立命館大学、クリスタル光学(滋賀県大津市)など レアメタルの少ないガラス研磨材
大阪府立大、シャープなど 室内での野菜栽培
京都大学、パナソニック、テルモなど 次世代医療機器
神戸大学、篠田プラズマ(神戸市)など 医療などに使うフィルム型の紫外線光源