2013年1月22日火曜日

超電導ケーブルで送電、省エネへ実用化探る、国内で相次ぎ実験開始。


 発電した電気を無駄なくほぼ100%送れる超電導ケーブルを使った送電実験が国内で相次いで始まった。送電時の電力損失を減らせるので、現在の銅ケーブルなどから置き換えれば大幅な省エネにつながる。超電導技術は日本の得意分野だが、実用化への取り組みは遅れていた。実験を積み重ねることで、既存の送電インフラの更新の一部置き換えを狙う。

 「超電導ケーブルで送った電気を、超電導ケーブル用の線材生産に使う」。頭が混乱しそうな発言の主は住友電気工業の林和彦・超電導製品開発部長だ。同社は今月7日、大阪市内にある自社工場内で超電導送電の実験を始めた。

 関西電力から供給された電気を70メートルの超電導ケーブルを使い、3300ボルト、200~400アンペアで超電導線材の生産工場に送る。「自社の実験データを示しながら、超電導ケーブルを様々な産業分野での採用につなげたい」(林部長)。電気を大量に使うデータセンターや化学・鉄鋼メーカーの工場などが超電導ケーブルを採用すれば、省エネにつながる。実験を通じ事業拡大を目指す。

 超電導ケーブルはセ氏零下196度の液体窒素で冷やすと、電気の流れを妨げる抵抗がゼロになる。銅ケーブルでは送電途中で約5%が熱になり失われてしまうが、超電導ケーブルなら損失をほぼ半分にできる。

 銅ケーブルや住友電工の実験は電気を交流で送る方式だが、直流にすれば損失は約0・5%と、さらに省エネ効果が高まる。太陽光発電とも相性がよい。直流方式の実験も今年、北海道石狩市で始まる見通しだ。

 中部大学の山口作太郎教授を中心に、自治体などが協力。さくらインターネットが運営するデータセンターの近くに大規模太陽光発電所(メガソーラー)を新たに設置し、300~500メートルの超電導ケーブルで電気を送る。太陽光発電で生み出す電気は直流で、コンピューターで使う際も直流。銅ケーブルでは送るときだけ交流にしていた。直流のままなら電気を変換する必要がなく、変換時の発熱などを抑えられる。

 このプロジェクトへの企業の関心も高い。超電導ケーブル、冷凍機、化学、鉄鋼、電機、建設などの企業に参加を呼びかけており、30社以上が参加を検討しているという。国の助成が得られれば、北海道電力の変電所から約2キロメートルのケーブルを使ってデータセンターまで直流で送る実験にもとりかかる計画だ。

 山口教授は「電気抵抗による損失や発熱がなくなれば、空調の費用も減る。データセンター全体で40%以上の省エネになる」と期待を込める。東京電力も昨年10月、横浜市内の変電所で住友電工、前川製作所と共同開発した超電導送電システムを日本で初めて実際の電気系統に接続するなど、動き出している。

 米国やロシア、中国などは日本メーカーの技術も活用し、一足先に超電導送電の実験を始めている。スマートフォン(スマホ)のように、日本勢の役割が主に部品供給にとどまり、製品化や実用化で後れを取る可能性もある。相次ぐ実験をいかに早く実用に結びつけるかが今後の課題になりそうだ。

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