2013年1月22日火曜日

遺伝子のスイッチ役「エピゲノム」研究、慢性疾患治療に的、東大、糖尿病で成果。


理研は精神疾患

 最先端の遺伝子研究である「エピゲノム」を、糖尿病などの生活習慣病や精神疾患といった慢性化しやすい病気の治療に活用する医学研究が盛んになってきた。遺伝子の働きを「オン」「オフ」にするエピゲノムが、加齢やストレス、食生活の影響を受けやすいことがわかってきたからだ。薬で遺伝子を正常な状態に戻せると専門家はみており、新たな治療法開発を目指す。

 高血糖状態が続くことで腎臓の機能が損なわれてしまう糖尿病性腎症。腎臓の細胞の特定遺伝子にブレーキ役の「メチル基」がくっつきにくくなることが発症のきっかけになっている可能性が高いことを、東京大学先端科学技術研究センターの研究チームが突き止めた。

 藤田敏郎特任教授と丸茂丈史特任講師は血糖値が高い糖尿病性腎症のモデルマウスを使って研究した。腎臓の細胞のDNAを調べたところ、腎機能を衰えさせる遺伝子に、働きを止めるメチル基がくっついておらず、異常に働いていた。
 糖尿病のように血液中の血糖が増えることでメチル基が外れやすくなるとみている。血糖値を下げる薬を与えるとくっつくようになり、遺伝子の働きが止まった。
 藤田特任教授は「メチル基を外さない薬剤があれば、腎症を治すことができるかもしれない」と話す。

 星薬科大学の成田年教授らは、外傷などをきっかけに傷が治った後も激しい痛みが続く神経障害性疼(とう)痛の治療研究に取り組む。マウスの実験では、脊髄の細胞で炎症たんぱく質を作る遺伝子の一部に本来つくはずのメチル基が存在しないことがわかった。神経が傷ついた後に痛みを起こす物質が出てメチル基を外し、痛みを長期化させているとみている。
 成田教授は「傷ができた直後から医療用麻薬などを使い痛みを取れば、メチル基が外れずに痛みが慢性化しない」とみており、動物実験を進めている。

 理化学研究所の加藤忠史チームリーダーらは、双極性障害(そううつ病)を対象に、神経伝達物質セロトニンを正しく運ぶ遺伝子と発症との関連性を調べた。

 片方だけが双極性障害を患う一卵性の双子を対象に、血液細胞のDNAを解析した。患者の「セロトニン運搬遺伝子」の一部にメチル基がくっつき、遺伝子が働いていなかった。発症していない人ではほとんどついておらず、遺伝子は通常通り機能していた。
 子どものころに受けたストレスなどの環境要因が、変化を引き起こした可能性があるという。

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