物質・材料研究機構などの研究グループは、人間の脳のように情報を記憶もすれば忘却もする素子を開発した。脳神経細胞同士の接合部であるシナプスに相当する働きをする。重要な情報は長く強固に記憶し、不要な情報は忘れる脳型コンピューターの開発に役立つという。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校との成果で、英科学誌ネイチャー・マテリアルズ(電子版)に27日掲載される。
開発した「シナプス素子」はイオンや原子の動きを制御して働く原子スイッチを応用した。縦横50ナノ(ナノは10億分の1)メートルのサイズで、素子の電極間に1ナノメートルの隙間がある構造。わずかな電圧操作で材料の硫化銀から銀原子が析出し、隙間に橋をかけて強く接続したり、逆に銀原子が戻って隙間ができたりする。隙間が空いても完全に切れず、弱く接続している。
脳のシナプスは信号入力の頻度が多いと接続が強固になり、少ないと弱くなり、これが記憶の重要な仕組みの1つと考えられている。同様に新型素子も信号の頻度や時間、大きさによって接続強度が変化する。逐一プログラムで指示しなくても、自分で判断する賢い脳型コンピューターに必要になるという。
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