2011年6月30日木曜日

マウス皮膚細胞→肝細胞、九大、iPS経ず直接作製

 九州大学の鈴木淳史准教授らは、マウスの皮膚細胞から肝臓の細胞を直接作り出す技術を開発した。新型万能細胞(iPS細胞)を経ずに作れるので、がん化の危険性や作製時間・費用などを低減できる期待がある。肝炎や肝硬変などの新たな再生医療法の実現などに役立つ成果。英科学誌ネイチャー(電子版)に30日掲載される。
 皮膚細胞などから目的の細胞を直接作る手法は「ダイレクト・リプログラミング」と呼ばれる。世界で研究が活発化しており、神経や軟骨などを作る技術は既に開発されている。
 研究チームはマウスの皮膚細胞に「Hnf4α」と「Foxa」という肝臓で働く2種類の遺伝子を、レトロウイルスというベクター(遺伝子の運び手)を使って導入した。肝細胞が育ちやすい培養環境を整えたところ、約1カ月で肝細胞が得られた。胎児と大人由来の皮膚細胞でそれぞれ試し、いずれも肝細胞ができた。この細胞を「iHep細胞」と名付けた。
 これまでは皮膚細胞をiPS細胞に変え、さらに肝細胞に分化させる手順が一般的。ただiPS細胞はあらゆる細胞になれる半面、未分化な細胞ががん化する可能性などが指摘されている。
 得られた肝細胞は、本物の細胞と同様のたんぱく質が働き、肝細胞特有の機能も確認できた。増殖も可能。肝細胞が十分に働かず死に至るマウスに、作った肝細胞を移植すると2カ月後でも約40%が生存できた。「1回の移植での成績としては非常によい」(鈴木准教授)と評価。人にも同様の遺伝病があり、本人の皮膚細胞を活用した再生医療の実現につながると期待している。

0 件のコメント:

コメントを投稿