2013年1月31日木曜日

ローム系のラピス、マイコン、消費電流を半減、ネット銀認証用、中国に供給。


ロームの子会社の半導体メーカー、ラピスセミコンダクタ(横浜市、岡田憲明社長)は消費電流を従来品の半分に抑えた小型のマイコンを開発した。コイン大の小さな電池でも電子機器を長時間駆動できる。まず中国のネットバンキングの認証に使うトークンの部品として供給する。
 開発したマイコン「ML610Q474ファミリ」は3月から宮城工場(宮城県大衡村)で量産する。サンプル価格は1個200円。
 8ビットのCPU(中央演算処理装置)を備える。内蔵する水晶発振回路や変圧装置などに使う電流を半分にするなどして全体の消費電流を従来の500ナノ(ナノは10億分の1)アンペアから250ナノアンペアに引き下げた。
 これまでは水晶発振回路などが使う電流を抑えると電波や静電気、他の電子回路から発生するノイズの影響を受けて誤作動が起きやすくなる課題があった。ラピスはこのほど横浜市の本社内にノイズを試験・計測する最新の実験室を開設。ノイズを抑制するフィルター(トランジスタ回路)をマイコン内に細かく設定して少ない電流でも安定的に動くことを実験で確認した。
 デジタル回路は通常、動作時に一定周期のクロック信号を出して電流を消費する。新製品ではマイコンを使わない間はクロック信号を止めたり、電圧を調整することで高温時にトランジスタから漏れる電流を減らしたりした。これらの技術の積み重ねで消費電流の大幅削減を実現したという。
 消費電流が少なければ容量が少ない電池でも長い時間動作するため、製品の小型化や電池の調達コストの削減につなげられる。
 ラピスは中国の金融機関の利用者に広がっているトークン向けに供給する。トークンは一度しか認証に使えない使い捨てのパスワードを生成する小型の機器。同社は主に腕時計や電卓向けに低消費電流のマイコンを供給してきたが、中国でトークンの需要が拡大していることを受け、2014年度には1500万個の量産を計画する。将来は腕時計や歩数計、玩具などの需要も見込む。
 ラピスはOKIの半導体事業部門が母体の会社で、ロームが08年に買収した。昨年11月に本社を東京都八王子市から横浜市に移転。八王子にあった光ファイバー通信機器事業は3月1日付で米通信機器メーカー、ネオフォトニクス(カリフォルニア州)に約30億円で売却する。八王子の工場設備を譲渡し、従業員80人も移籍する。

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