2011年7月11日月曜日

液晶の苦杯バネに産業転換を

 液晶パネルが利益を生みにくい産業になりつつある。国内メーカーの苦戦が続くほか、最大手の韓国・サムスン電子も先週発表した4~6月期決算でこの分野が赤字になった。
 原因はメーカーの乱立による価格の下落だ。例えば中国ではテレビ用の液晶パネルをつくる新興企業が続々と産声を上げ、今年だけで4~5工場が新たに稼働する。製造装置さえあればだれでも参入できる。それがこの市場の現実になった。
 日本の電機メーカーはすでに事業の見直しを迫られている。シャープは先月、テレビ用の生産を減らし、スマートフォン(高機能携帯電話)などに需要が伸びている中小型液晶パネルに力を入れると発表した。
 すでにテレビ用から撤退した日立製作所も東芝とソニーが進める中小型パネルの事業統合交渉に加わった。技術が優位な時にコスト競争力をつけておこうとの狙いである。
 日本企業は液晶技術の草分けだ。部品や材料産業のすそ野も広く簡単にはこの分野を捨てられない。それだけにあらゆる手を尽くし、巻き返しの機会を狙っていくのが重要だ。
 ただ、これからは技術を磨きコストを下げるだけでは利益を期待できない。中国メーカーなどは自国に成長市場を抱え、今後も力をつけていく。優れた製品を送り出しても息をつく間もなく追いついてきそうだ。
 それは太陽光パネルやリチウムイオン電池など他の分野も同じだろう。価格競争力の戦いになれば日本は不利になり、それを避けるには従来と違う発想の経営が必要になる。
 日立や東芝は最近、IT(情報技術)の粋を集めた環境配慮型都市などに重心を移し、設備投資や企業買収を進めている。個々の技術を強くする一方でそれらを束ね、システムやサービスと一緒に提供して価格競争とは一線を画す。付加価値を高めていく経営モデルの一例である。
 サムスンもこうした方向に注目する。同社首脳は「このままでは10年後は中国に負ける」とし、医療やインフラへの参入に意欲をみせる。
 新しい競争が始まりそうだ。日本には液晶パネルや半導体で韓国と競い、苦杯をなめた歴史がある。今後進む産業の転換では失敗をばねに一歩も二歩も他の国に先んじたい。

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