スペースシャトルの30年の歴史に終わりを告げる「アトランティス」が8日、打ち上げられた。国際宇宙ステーション(ISS)への日米の有人飛行は当面、ロシアの「ソユーズ」頼み。オバマ大統領が新たに掲げた火星への有人飛行も財政難から不透明さが漂う。「宇宙大国」の存在感を増すロシアに加え、背後に宇宙ステーション計画を持つ中国が迫る。シャトル退役は世界の有人宇宙開発の転換点ともいえる。 【ケネディ宇宙センター(フロリダ州)=御調昌邦】スペースシャトル退役後の米国は宇宙開発の「新たな時代」(オバマ大統領)を目指す。ISSなど低軌道への輸送は民間企業に任せ、米航空宇宙局(NASA)は火星など非常に遠い「深宇宙」への有人探査を担うが、技術開発や資金確保などの面で課題は多い。 オバマ大統領は、ブッシュ前政権が打ち出した月への有人再飛行計画を撤回。昨年4月、2030年代半ばの火星軌道への有人飛行計画を掲げた。NASAのボールデン局長は火星や小惑星への探査へ「深宇宙用の有人宇宙船と新たな大型ロケットという2つの重要な要素を追求していく」と意気込む。 ただ計画には不透明な要素がある。NASAの年間予算は現在、約190億ドル(約1兆5000億円)。オバマ大統領は昨年、5年間で同予算を60億ドル増額する方針を示した。だが、財政赤字問題を背景に米議会では宇宙開発予算の抑制を求める動きも出ている。今後も「聖域」として扱えるかはわからない。 火星軌道など深宇宙への有人飛行には新技術の開発が不可欠なうえ、20年強も先の計画だ。ブッシュ前政権の月への飛行計画も資金面が課題だった。火星は月と比較にならないほど遠い。 一方、ISSへの物資や飛行士の輸送は基本的に民間企業に担わせ、打ち上げなどの費用抑制を目指す。昨年12月には著名起業家のイーロン・マスク氏が率いるスペースX社が、民間企業としては初めて大気圏に再突入する宇宙船の飛行を成功させた。 ただ、民間企業主導の仕組みがうまく機能するか課題は多い。民間への移行が順調に進んだとしても、米国製のロケットと宇宙船で飛行士をISSに送り届けられるのは早くても数年後とみられる。この間は、飛行士の輸送はロシアの「ソユーズ」に頼ることになり、有人宇宙探査で米国の影響力が弱まるのは避けられない。 |
2011年7月11日月曜日
宇宙開発、変わる勢力図、最後のシャトル打ち上げ、米、陰る威信、民間主導を模索
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