2013年1月30日水曜日

殺菌剤の製造装置、微酸性電解水研究所、食品の殺菌、安全に


流水感覚、人体に優しく
 食品業界で「微酸性電解水」が注目を集めている。食中毒の原因菌に対する殺菌効果がある一方、一般の殺菌剤に比べ人体への悪影響は少ないという。微酸性電解水研究所(神奈川県藤沢市、土井豊彦社長)はその殺菌剤の製造装置を開発する。集団食中毒のニュースが世間を騒がす中、食の安全確保に腐心する食品メーカーに売り込む。
 微酸性電解水は塩酸を電気分解してできる次亜塩素酸を水で薄めてつくる。食中毒の原因となる大腸菌などの細菌やノロウイルスに対する殺菌効果が確認されている。2002年には厚生労働省から殺菌目的で使う食品添加物として認められた。土井社長は「飲んでも大丈夫です」と話す。流水で洗うような感覚で食品や生産設備を洗浄・殺菌できる。大量の水ですすぐ必要がなく、コスト面の利点もある。
 実は土井社長こそが、微酸性電解水の生みの親だ。大学卒業後、大手乳業メーカーで1990年代から研究を始めた。
 食品業界では食品や生産設備の洗浄殺菌に、次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ソーダ)を使うのが一般的だ。塩素系漂白剤やプールの消毒液でわかるように、独特の塩素臭がある。実際、生産現場では食品に臭いが付いたり食感が悪くなったりするといった悩みを抱えていた。有機物と混ざると発がん性物質を生成することがあり、欧州では使用を規制している国もある。
 「殺菌剤としての有効成分だけ取り出せないか」。こう考えて塩酸を電気分解する方法を思い付く。乳業メーカーで実用化までこぎ着けたが、社内での事業展開のスピードに満足できず、「もっと世界に広めたい」と09年に独立した。
装置開発に苦労
 製造装置は電解槽に塩酸の原液をポンプで送り込んだ後、電気分解して次亜塩素酸をつくり、水で薄めて取り出す。原理は単純だが、電解槽の中は高濃度の塩酸で満たされており、「生成方法の研究より装置開発に苦労した」と振り返る。
 独立後も装置開発を続け、11年から本格的に販売を始めた。塩酸が電解槽の外部に漏れにくい構造にしたり、電極に耐食性の高いチタンを使ったりしている。電解槽は1台の装置に2個。万が一、片方が故障した場合にも食品工場の生産への影響を避けるための工夫だ。
 同社では装置の開発と検査を手掛け、部品生産や組み立ては外部の工場に委託する。慶応大学湘南藤沢キャンパスのインキュベーション施設内のオフィスには検査を終えた出荷待ちの装置が並ぶ。価格は微酸性電解水の生産能力が1時間あたり5千リットルの主力商品で950万円。同360リットル(100万円)の卓上装置や2万リットル(2000万円)の大型装置もそろえる。
韓国企業も導入
 コンビニ向けのカット野菜やサンドイッチを生産する食品工場などで採用されている。豆腐工場では出荷前の加熱処理が不要になり「大豆本来の甘みのある豆腐ができると好評だ」(土井社長)という。ボイラーの燃料費を削減できるメリットもある。韓国のビールメーカーにも導入したほか、欧州からも引き合いがある。これまでに100台が売れた。
 12年の売上高は7000万円。13年は倍増する計画だ。手づくりに近い状態から、部品設計の見直しなど量産可能な装置への改良を進めている。
 日本国内では年間100万トンの次亜塩素酸ソーダが消費されているという。これをすべて微酸性電解水に置き換えるのが、土井社長の目標だ。

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