昭和電工が手掛ける半導体向け高純度ガスの需要が拡大している。半導体や液晶、発光ダイオード(LED)などの生産工程で使うガスで、いずれも高い伸びを示している。同社は需要が増えているアジア地域で生産能力を引き上げ、物流の拠点の整備に動く。森川宏平・執行役員情報電子化学品事業部長にアジア市場の戦略を聞いた。
――高純度ガスの需要が伸びている背景を教えてください。
「高純度ガスは複数の種類があるが、いずれも半導体や液晶、LEDなどの生産に欠かせない。半導体シリコンウエハーの出荷量は2013年後半から伸び率が拡大し、14年には前の年に比べ1割強増えた。スマートフォン(スマホ)などハイテク製品だけでなく、自動車や白物家電などに用途が拡大したことが背景にある。昭和電工の高純度ガスの売上高も14年には2割以上増えている」
――需要の拡大を背景に生産能力も引き上げています。
「成膜材料になる亜酸化窒素は韓国企業と生産委託の契約を結び、年間600トンの生産を開始。韓国や中国などに出荷する。臭化水素は日本での生産能力を5割引き上げたばかりだ。13年に能力増強した際は3~4年後に増産すればよいとみていたが、半導体の製造工程の変更で臭化水素の需要が急激に伸びており、増産を前倒しにした」
――高純度ガス事業の強みは何でしょうか。
「高純度ガスは約20種類を手掛けており、半導体メーカーの生産工程が変わっても供給できる製品を持っている。今年から来年にかけても生産能力を引き上げる計画がある。ただ、高純度アンモニアや塩素などは日本で生産すると、コスト競争力の面で劣る。こうした製品は需要が伸び、生産コストの低い海外で増産する考えだ」
――海外の需要増加を受け、物流拠点も拡充しました。
「14年にはシンガポールと台湾で物流設備を増強した。顧客企業の近くに在庫を持ち、物流を効率化することが狙いだ。ただ、工業用ガスは専用の容器で運んでおり、顧客に納めた後も空容器を回収する必要がある。生産能力を増強したのと同じだけ、容器を増やすのは効率が悪い。サプライチェーン管理(SCM)の強化が課題となる」
――具体策はありますか。
「15年半ばをメドにSCMを担当する専門の組織を立ち上げる。容器の効率的な利用や営業・物流拠点の最適な配置を考える。18年までには容器の回転率を現在の2倍に引き上げ、生産の増加に伴うコストの上昇を抑制したいと考えている」
――売上高の目標はどの程度でしょうか。
「15年は前年に比べ1割以上の増加を見込んでいる。年率15%程度増やしていき、18年には400億円を目指す。海外売上高比率は現在の6割から7割に引き上げたい。足元では中国の需要が鈍っている様子はなく、今後は液晶やLED関連が増えるとみている。もっとも、過去に供給過剰に苦しんだ経験がある。多様なガスを手掛けているうえ、自社の販売拠点を海外に持っているのは強み。過大な投資をせず、コスト引き下げの努力を続けたい」
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