2015年4月21日火曜日

産総研など、国立研究開発法人に、イノベーション強く意識、研究費確保、企業とも連携。

研究開発を担う政府系機関が4月から「国立研究開発法人」という名を冠した。一般の独立行政法人と同じ扱いだったが政府は投資による研究成果の最大化を目指す研究機関に業務コスト削減を重視する独法はそぐわないとして制度を改めた。各法人は政府の戦略に沿ってイノベーションを意識した体制を整えた。外部資金を多く獲得しようとの思惑も見て取れる。
 産業技術総合研究所や理化学研究所など31法人が国立研究開発法人となった。新法人は研究成果を最大限高める目標を課せられており主務大臣が評価する。政府の考えを反映しやすい仕組みだ。
 政府は厳しい財政状況から法人に渡す基盤的経費の運営費交付金を減らしている。各法人は技術や成果がイノベーション創出に貢献すれば、優れた研究に与えられる競争的資金や民間資金を獲得できる可能性が高まるとみて、動き出している。
 情報通信研究機構は個人情報の漏洩防止システムなど企業の需要が強い技術開発に重点を置く。外部からの研究資金獲得を強化し、2015年度は前期比2割増の14億円の資金獲得を目標に掲げる。坂内正夫理事長は「実社会の課題を解決しながら情報通信で新たな価値を生み出したい」と話す。
 大学や企業などと積極的に協力するオープンイノベーションも進める。20年の東京五輪を照準に民間企業約10社と組み、多言語の音声翻訳サービスを開発する方針だ。
 産総研は4月からの新中期計画で目標や組織体制を改めた。企業からの資金獲得額は現在約46億円だが、5年後は3倍以上にする目標を立てた。企業の抱える課題の解決策を提示できるような場合は有償で相談に乗ることも視野に入れる。今夏にも試行する考えだ。
 政府が医療研究の司令塔と位置付けて4月に発足した日本医療研究開発機構は再生医療やがん、精神・神経系疾患の治療研究などを柱に据える。末松誠理事長は「研究費の配分にあたり最初から医療応用や事業化を考えているかが重要になる」と実用化重視の姿勢だ。
 難病研究は開業医や大学病院などの連携を促し効率的に進める考え。ゲノム(全遺伝情報)解析の成果を生かし、がんなどの正確診断や治療効果が高く副作用の少ない薬の早期開発につなげる。
 「宇宙は組み合わせ産業で日本は要素で見ると強い。我々が糾合したい」と意気込むのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の奥村直樹理事長だ。国内メーカーは衛星とロケットの一方だけを事業としているが、両方を手掛けるJAXAはそれぞれの研究部隊などを集約し国際競争力を強める。
 まだ大きな変更がない法人もあるが、文部科学省幹部は「国立の名前が付いたことで、成果の社会還元へ研究者の意識が変わればよい」と話す。
 政府はさらに、優れた研究者を高給で雇用できる「特定国立研究開発法人」の導入も目指す。国際競争力を高める狙いで産総研と理研が候補だ。ただSTAP細胞論文の不正問題で理研が改革を求められており、国会への法案提出が遅れている。

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