2013年5月16日木曜日

ソニー――4Kテレビ用超解像技術、フルHDも高精細に

 ソニーは6月からフルハイビジョンの約4倍の解像度を持つ「4K」の液晶テレビの販売を本格化する。苦戦が続くソニーのテレビ事業にとって4Kテレビは再生の切り札。通常のフルハイビジョン映像でも4Kに近い画質で楽しむことができる超解像技術を活用し、ライバル各社に差を付ける戦略だ。
 「ソニーが持つ15年以上にわたるテレビの高画質化ノウハウのすべてを投入した」。テレビ事業部で4Kテレビの開発を担当する飯田譲司エンジニアリングマネジャーは、6月1日に発売する4Kテレビ「KD―65X9200A」を見ながら強調する。
 ソニーは昨年11月に84型の4Kテレビを発売したことを手始めに、6月から65型と55型の2機種の販売を始める。4Kとは1000の単位を意味し、水平方向の画素数が約4000のために名付けられた。解像度がフルハイビジョンの約4倍のため、従来はぼやけていた画像が鮮明に見えるようになった。
 4Kテレビについて、4Kコンテンツの不足が普及を遅らせるとの見方もある。しかし、ソニーの4Kテレビ「X9200Aシリーズ」の特徴は通常の映像でも4Kに近い鮮明な画質に高めて楽しめること。それを実現したのが同シリーズに搭載した超解像エンジン「4K・X―リアリティ・プロ」だ。
 4Kよりも画質が劣るフルハイビジョンの映像をどう4Kの画質に高めるのか。ソニーでは「データベース型照合置換」という技術を採用する。
 ソニーは映画や放送部門が4Kの映像データを大量に保有しており、4Kの映像信号波形をフルハイビジョンに劣化させた場合の波形の変化パターンを数千種類持っている。この変換パターンを逆方向で利用するのがデータベース型技術のミソだ。
 具体的にはフルハイビジョンの映像信号波形が入力されたら、まずノイズを低減する処理を施した後、変化パターンを蓄積したデータベースで照合。4K映像として撮影した場合に持つとみなす映像信号波形を作り出し、被写体の輪郭や質感などを復元して鮮明な映像を実現する。
 国内のライバルメーカーも超解像技術を導入したとしているが、ソニーによると、データベース型は同社独自の技術。他社は半導体などによる演算型の技術を採用しているという。データベース型のメリットは4K映像の再現性が高いうえ、処理速度が速く、エンジンに組み込んだ半導体への負担が少ないため、コストを圧縮できる点にある。
 液晶テレビの世界市場は2012年に初めて前年割れとなったため、各社は4Kテレビで消費意欲を高める狙いだ。ソニーのほか、東芝やシャープといった日本メーカーに加え、韓国のLG電子や中国の海信集団(ハイセンス)や創維集団(スカイワース)などが発売。50型で1万1000元(約16万円)の低価格商品も登場している。
 ソニーは超解像技術を使った製品投入により、低価格を特徴とする中国メーカーとは違いをアピールする。テレビの歴史は高画質化と大画面化の歴史でもあり、4Kの次はハイビジョンの16倍の解像度を持つ「8K」も控える。飯田エンジニアリングマネジャーは「低品位の映像を高品位に向上させる超解像技術の精度を高めていきたい」と意気込む。

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