2013年5月16日木曜日

新薬や新材料研究に活用、光・量子ビーム技術融合――文科省新事業

小型加速器も開発
 文部科学省は光技術と量子ビーム技術を融合した新たな研究開発事業に乗り出す。電磁波を利用する光技術と、中性子やイオンを使う量子ビーム技術の知見を統合し、物質の構造や反応などを解明する。小型加速器の開発にも着手。得られた成果を手掛かりに新薬や新材料の開発につなげる。
 同省は従来、光技術と量子ビーム技術を別々に研究してきた。光を増幅したレーザーは情報通信や建築加工に応用。量子ビームは物質・材料の解析に有効だ。ただ近年は両技術の役割が重なりつつあり、融合の必要性が指摘されていた。
 今後3~5年かけてレーザーのほか、中性子やイオン、電子、放射光など複数の光・量子ビームを利用し、新原理の解明を目指す。事業数は3~6件程度で1件あたり年間最大1億円を投じる。5月下旬に委託先を決め、6月末にも事業を始める。
 レーザーや放射光などのそれぞれの波長やパルス幅の違いを利用し、物質の反応を解析する事業などを想定。人の視覚システムが解明できれば新薬開発が期待できる。光合成の過程を解明できればエネルギーの変換・貯蔵のための超微細部品の研究開発に役立つ。
 短時間で大きなエネルギーを発するパワーレーザーで超高圧状態にした上で、電子で作った放射光を当てて物質の反応を解析する事業も想定される。従来の技術では実現できない超高圧下の新たな物質材料が創出できる可能性がある。
 文科省は量子ビームの新たな加速器の開発も始める。従来の加速器は茨城県東海村の「J―PARC(大強度陽子加速器施設)」や兵庫県播磨科学公園都市の「SPring―8(大型放射光施設)」など大型の施設が多かった。研究室規模で使用できる小型加速器を開発する。
 光科学施設を含め他の施設に持ち運び可能な小型加速器を作り、光・量子ビーム技術の融合を効率的に進める。メーカーなど産業界の研究者も容易に利用できる解析ソフトを備えたシステムも開発する。このほか各施設の共用や人材交流も進める。先端的な光技術・量子技術を複数備える研究者を育成し、イノベーション創出を強力に推進していく方針だ。

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