全地球測位システム(GPS)の日本版で正確な位置情報サービスを提供できる「準天頂衛星」の産業利用に向け、7月にも産官学の協議会が発足する。ソフトバンクモバイルや三菱電機など約200社が参加、2016年にも社会実証試験が始まる。企業が知恵を持ち寄りながら、ビジネスへの道筋をつける。
「高精度衛星測位サービス利用促進協議会」の設立は15日、都内で開かれた「衛星測位と地理空間情報(G空間)フォーラム」で明らかになった。経済産業省の武藤寿彦宇宙産業室長は「準天頂衛星の利用は企業から意見が出ることで急激に拡大する」と企業に積極的な参加を呼びかけた。
内閣府の宇宙戦略室や経済産業省、文部科学省などのほか、宇宙関連の研究をする大学教授らも参加。「海外展開」や「利用環境」など課題ごとに4つの作業部会を設け、アジアでの通信インフラの利用環境や必要な法整備などを議論し、政府に提言していく。
準天頂衛星は日本列島などの真上を8の字を描いて旋回し位置情報を地上におろす。現在のGPSでは約10メートルある誤差が十数センチになる見込みで、より正確なカーナビゲーションシステム、飛行機の運用、建機の制御、防災などへの応用が進むとみられる。
これまでに位置情報や受信の精度などを調べる技術実証試験を終えた。全国で均一に高い精度で測位データを得られることなどが確認できた。
準天頂衛星は今でこそ政府の重要施策だが、1基あたり300億円以上とされる巨額投資にかねて省庁や民間企業は及び腰だった。それが一転、内閣府が11年に引き取ると整備計画が加速。経済官庁が水面下で動いて経済波及効果が「日本を含めたアジアで約4兆円」と訴えるなどして流れが変わった。専門家も「産業界からの強い働きかけで(協議会設立が)実現した」と分析する。
「GPS依存」からの脱却を求める意見もある。GPSの測位データは無料で使えるが、いつまでそれが続くか分からない。安全保障の観点からも早く7基体制を確立し、独自にデータを取得する必要性も指摘される。
海外では中国や欧州、ロシアなどが独自の測位衛星計画を進める。準天頂衛星をうまくビジネスにするには受信機の普及や斬新なアプリケーションが必要になる。運用の前提となる4号機まで滞りなく開発することも欠かせない。
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