2013年1月24日木曜日

遺伝子のスイッチ役「エピゲノム」研究――がん治療薬も登場、創薬競争が本格化。

 エピゲノムはDNAに刻まれたゲノム(全遺伝情報)から生命活動に必要な情報を引き出す仕組みだ。人の体を構成する約60兆個の細胞のゲノムがすべて同じにもかかわらず、皮膚や神経、筋肉などの違いがあるのは、エピゲノムによって遺伝子が「オン」「オフ」になるから。具体的には遺伝子の特定の場所にメチル基などの分子がくっついたり外れたりする化学変化によって起こる。
 ヒトのエピゲノムは、約200種類ある細胞ごとに異なる。このため医学応用につなげるには膨大な情報量を解析しなければならない。シーケンサーと呼ぶ最先端の解析装置などが普及した2000年代半ばから研究が国内外で急速に進んだ。
 まず、がんの分野で先行した。白血病の前段階である骨髄異形成症候群では、がん抑制遺伝子にメチル基がくっつくのを防ぐ薬が開発され、日本を含めて欧米で治療薬として使われている。
 糖尿病などの生活習慣病やうつ病などの精神疾患でも、発症や再発とエピゲノムとの関係が明らかになるにつれ、今後、治療薬の開発競争が本格化する見通し。
 「エピゲノム薬」では目的の臓器や組織にだけ薬剤が到達するようにしなくてはならない。ほかの臓器や組織に作用してしまうと正常なエピゲノムを狂わすことになりかねないからだ。実用化にはドラッグ・デリバリーシステム(DDS)の活用なども欠かせない。

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