2013年1月24日木曜日

洋上プラントの土台、IHI、中古船を改造――シンガポール勢に対抗。

塗装一度で、費用削減
 IHIは洋上プラントに使われる船の改造事業に乗り出す。中古の大型ばら積み船やタンカーの不要な骨組みや壁材を取り外し、腐食部の塗装などをやり直して中小型洋上プラントの土台に仕上げる。愛知工場(愛知県知多市)の老朽化した溶接・切断機械を更新するほか、塗装の専門治工具も開発。改造コストを抑えてシンガポール勢に対抗する。
 手がけるのは1基あたりの改造の受注額が50億~100億円程度の中小型。全長200~300メートルほどの中古船を愛知工場に持ち込み、船体の補強や一部構造を変更したうえで、洋上プラントを一定の位置に保持する係留装置を取り付ける。採掘した石油や天然ガスを貯蔵するタンクの据え付けなどを含め、7~8カ月かけて洋上プラントの土台に仕上げる。
 中古船の改造はプラント用に新規に土台部分を建造する案件に比べて需要が多いとされる。ただ改造は塗装工程など人手がかかる作業が多いため、人件費の安いシンガポール勢が強かった。
 IHIはこれに対抗するため、1~2年後をメドに塗装の専門治工具を開発。塗装を厚くするため複数回塗り直す必要があった工程を一度で済ませる仕組みとする。また老朽化した溶接・切断の設備を更新することで効率化も進むとみており、全体で2~3割ほどコストを抑える。これによりシンガポール勢とのコスト差をほぼなくせるとみており、納期管理や技術力などで勝るIHIの強みを生かせば受注が確保できると判断した。
 すでに複数の商談が進んでいるとしており、年度内から来年度初めにかけての初受注を目指す方針だ。洋上液化天然ガス(LNG)プラント向けの案件も受注を目指す方針で、改造事業を中心に3~5年後に約500億円の受注を目指す。中古船の改造を手がけることで、得意とするLNG用の高性能タンク「SPBタンク」の受注拡大も期待できるとみている。
 IHIの愛知工場は、リグとよばれる大型の海洋掘削装置の建造を手がけるなど海洋開発分野の専門工場で、SPBタンクも製造している。年6兆円とされる海洋開発分野では日本勢が劣勢にあり、建造受注に占める割合は1%弱とされる。国内造船大手は海洋試掘船やオフショア支援船など海洋開発分野のテコ入れを急いでいるが、IHIも改造需要の開拓で巻き返しを狙う。

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