2013年1月24日木曜日

タムラ製作所、基板接続用はんだ――低圧処理、部品傷めず

 電子材料などを手掛けるタムラ製作所は昨年からスマートフォン(スマホ)に使うプリント基板同士を接続するはんだを販売している。「導電フィルム」と呼ぶ薄い膜を基板に挟み込んで接続する従来手法に比べて10分の1以下の圧力で済む。基板上に載せる電子部品を傷めるリスクを抑えられる。
 「スマホは年々高機能になり、基板に載せる部品の間隔がどんどん狭くなっている。少ない圧力で済む新製品は確実に需要が見込める」。タムラ製作所の電子化学事業本部の開発本部でマネージャーを務める土屋雅裕氏は新しいはんだの利用拡大に自信を示す。
 開発したはんだは、硬いリジッド基板と薄く曲げられるフレキシブル基板の2つのプリント基板を接続して電気を通すのに使う。リジッド基板は主要な電子部品を載せるメーンボードの役割を果たし、フレキシブル基板はカメラの複合部品(モジュール)などを載せる。
 リジッド基板にはんだを塗り、フレキシブル基板を上から重ねる。加熱圧着装置でセ氏190度以上で熱しながら10~15秒程度の時間で圧力を加えると、はんだが溶けて基板が接合する。
 はんだには10~34マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの金属の粉末に潤滑剤となる樹脂粉末を混ぜている。金属粉末はスズやレアメタル(希少金属)の一種であるビスマスを混ぜ合わせている。
 タムラ製のはんだには金属粉末が溶けると基板の導線の部分に集まる性質を持たせており、樹脂粉末は導線の間の絶縁部分に集まる。はんだが冷えて固まると、導線の部分は金属粉末を通じて電気が流れ、導線の間は絶縁される。
 タムラ製は金属粉末と樹脂材料の両方を自社で手掛けている。粉末の粒子の大きさや金属と樹脂の配合の見直しで、複雑な接続構造を実現した。
 基板の接続には導電フィルムを挟み込む場合が多い。フィルムはニッケルなどの樹脂粉末に金属をめっきしたものをちりばめており、基板の間に挟んで圧力をかけると、導線の部分で金属粉末を押しつぶすようにして固定する。
 タムラ製によると同一条件で比べた場合、導電フィルムを使った接合には10メガ(メガは100万)パスカルの圧力が必要なのに対し、はんだは1メガパスカル以下の圧力でつなげられるという。少ない圧力で済むため、基板に載せている電子部品を傷めたり、取れたりする可能性を減らせる。
 接続作業にかかる時間も減らせる。導電フィルムでは基板同士の位置などを決めるため、圧力をかける前に低い温度や圧力で一度フィルムを取り付けて位置などを確認する「仮止め」工程がある。はんだでは接続したい範囲に塗るだけで済むので仮止めの一連の工程を減らせる。
 タムラ製ははんだなどの電子化学材料部門を今後の成長事業と位置付けている。2012年3月期に164億円だった電子化学材料全体の売上高は13年3月期には193億円になる見込みだ。
 基板接続に使うはんだはスマホのほかにデジタルカメラなど小型の電子機器での利用を見込み、圧力をかける時間がより少なくて済む製品や低い温度で溶ける製品などの開発も進めていくという。
製品の概要
▼製品名 SAM30―401―11
▼用 途 スマホなどのメーン基板と柔軟なフレキシブル基板の接続
▼特 徴 従来の導電フィルムの10分の1以下の圧力で接続できる
▼時 期 2012年から量産

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