2011年7月15日金曜日

がん患者の細胞、体外3D環境で増殖――大阪府立成人病センター、治療効果の予測も。

 大阪府立成人病センターの井上正宏部長らは、患者から採取したがん細胞を、体外の3次元環境で増殖する手法を開発した。この細胞を使えば個人ごとに異なる抗がん剤や放射線の治療効果を、事前に細胞レベルで予測することも可能。患者に最適な治療法選択などに役立つとみている。
 患者のがん組織を採取してフィルターに通し、バラバラにならなかった断片を集めて培養した。がん細胞だけが丸くなり他の細胞と区別できた。がん細胞は、約2週間以上生き、増えた。胚性幹細胞(ES細胞)の培養に使う栄養や増殖因子入りの培地を使うとよく増えることも分かった。大腸と肺、ぼうこうのがん細胞で確認した。
 患者から採取したがん細胞の培養は難しく、従来はフィルターを通ったバラバラの細胞を選んで培養していた。しかし正常細胞が混入したり、途中でがん細胞が不安定になり大半が死んでしまったりする課題があった。特別な条件で増殖した「がん細胞株」を使うこともあるが、培養を繰り返すとがん細胞の性質が失われてしまうという。
 新手法は患者のがん細胞をそのまま培養・増殖できるため、がんの研究・治療に広く役立つ。がん細胞をマウスに移植すれば、患者の状態も再現可能。効果のない治療を回避でき、患者負担の軽減や治療費の節約につながるとみている。
 成果は米科学アカデミー紀要に掲載された。

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