年間稼働率 9割に向上
東京大学の林昌奎教授は、マイクロ波を使った新型波浪計を開発した。海面で反射したマイクロ波の周波数を自動解析し、海の波高や波の向き、速度を算出する。波が低い穏やかな海でも観測できるため、従来型のレーダーでは5割以下にとどまっていた年間稼働率を9割に引き上げられるという。半年後をメドに実用化し、自治体向けに売り込む。
開発したのは2台のパラボラアンテナを組み合わせたレーダー。海面での反射波がレーダーに向かって動けば周波数は高く、レーダーと逆方向に動けば低くなる。2台のアンテナを組み合わせることで、波の東西南北の向きを判別できる。
このレーダーで数分間継続して観測することで、風が吹いて立つさざ波など海面の波と波長が異なるノイズを自動的に取り除ける。周波数のほか、反射波の強さも解析し、海面の平均潮位を算出できる。
波浪観測用のレーダーはマイクロ波で海面の写真を撮影する画像レーダーを使うのが一般的。このレーダーは解像度が低いため、波高が30センチ以下の穏やかな天候では、風で起きるさざ波で反射波が増幅されて誤差が大きくなった。晴天時には使いにくく、年間稼働率が低く普及が遅れていた。
林教授らは神奈川県平塚市の沖合に新型波浪計の実験機を作り、性能試験を進めている。今後はメーカーと交渉して装置の量産化を目指し、総務省に波浪計の設置許可を申請する。レーダーの価格はアンテナと送受信装置、データの解析装置を含め1台あたり1000万円強と、従来の海底設置式の波浪計に比べ3分の1程度に抑えられる見通し。
安価で稼働率が高い新型波浪計が普及すれば、平常時の波高観測や台風の高潮、地震で発生した津波の観測に役立つ。
0 件のコメント:
コメントを投稿