三菱重工業子会社で橋梁製造の三菱重工鉄構エンジニアリング(広島市、東完夫社長)は、地震時に部屋全体の揺れを軽減する低コストの免震装置を開発した。床の下部に防振ゴムや揺れを回転運動に変えるボールベアリングなど複数の仕組みを組み合わせたシステムを設置。床自体を補強する従来の一般的な免震工事に比べコストを3割程度抑えられる。東日本大震災後の企業・施設の耐震対策に対応し、サーバールームや美術館向けなどに販売を始めた。
新免震装置は、揺れを吸収する防振ゴム、揺れでずれた建物と床の位置を戻すバネ、横揺れを軽減する装置、それに特殊機構で構成する。対象となる部屋の床に一定間隔をあけて設置し、部屋の中にある電子機器や物品に伝わる振動を抑える。
最も重要な役割を担う特殊機構は、揺れを伝える棒状のネジの周りに、上下運動を回転に変えるボールベアリングを取り付けた。変換した回転運動が下部の円盤を回すことで免震。揺れが収まった後は、周りに取り付けたバネが、揺れによって下に沈み込んだ床と装置全体を上に戻す。
これまでの一般的な部屋の免震は、床自体の鋼材やコンクリートなどの重量を増すことで、揺れの周期を長くして振動を抑えてきた。ただ材料調達から施工までの工費がかさむ課題があった。三菱鉄構エンジの新型免震装置の工費は個別に見積もるため明らかにしていないが、従来手法と比べると一般に3割ほど削減できるという。
企業のサーバールームなど振動が性能に影響する機器を備えるオフィスや、美術館や骨董品を扱う施設向けに売り込む。コンサートホールの防振などの用途も見込む。主に新しい施設に使うが、既存の施設にも設置できる。5年後をメドに、同装置を含めた免震事業の売上高を現在の2・5倍の年25億円に引き上げる計画だ。
三菱鉄構エンジは三菱重工グループの橋梁部門などを担う子会社として2006年設立。広島市と千葉県富津市に工場を持ち、10年度の売上高は約260億円。橋梁の技術を生かして免震事業を本格展開する。
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