富士フイルムは、東京電力管内にある拠点間で自家発電の電力を融通できる体制を整えた。今夏義務付けられた使用最大電力の15%削減が難しくなった場合に融通を実施し、東電からの購入電力を減らすことで削減率を確保する。空調や照明などの節電を優先するが、緊急時のリスク対策として、東電の送電線を通じて電力を送る託送契約を同社と結んだ。
政府の電力使用制限は契約電力500キロワット以上の事業所に15%削減を義務付けており、同社では東電管内で15拠点が対象になっている。同社は15拠点をまとめて合計の使用最大電力を削減する手法をとっている。削減の基準値となる昨夏の使用最大電力は計約5万7000キロワット。
電力融通に活用するのは、医療用のレントゲンフィルムなどを製造する富士宮工場(静岡県富士宮市)の自家発電設備。天然ガスを燃料とするコージェネレーション(熱電併給)システムがある。発電能力は明らかにしていないが、数万キロワット規模とみられる。
東電管内ではほかに神奈川工場足柄サイト(神奈川県南足柄市)など2カ所にも自家発電設備があるが、富士宮工場の設備が最も発電余力があるという。
同社は効果的な節電に向け、東電管内の15拠点のうち、電力使用量の95%を占めている11拠点に、使用量を計測・把握するシステムを導入。拠点ごとの使用電力量を本社や各拠点で逐次把握できる。15拠点合計の使用電力の動きを推定し、猛暑などで通常の節電策を使っても15%削減が難しいと判断した時に電力の融通を実施する。
富士宮工場は工場で必要な電力の多くを既に自家発電設備で賄っているもよう。このため託送をせずに同工場で自家発電の電力の使用量を増やして東電からの購入電力を減らすという調整は難しいとみられる。
同社は神奈川県にある研究所に設置している大容量蓄電設備のナトリウム硫黄(NAS)電池も活用し、夜間にためた電力を昼間に使う取り組みも進めている。節電目標を達成しながら生産への影響を避ける方針で、「想定外の事象が起こった場合のリスク対策として」拠点間で電力を融通できる仕組みを構築した。
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