2011年7月15日金曜日

骨髄提供者の免疫細胞、患者臓器の攻撃抑制―レグイミューン、米で第1相治験。

 創薬ベンチャーのレグイミューン(東京・港、森田晴彦代表取締役)は白血病治療などでの骨髄移植の際、提供者の骨髄に含まれる免疫細胞が患者の臓器を異物と認識して攻撃するのを抑えられる新薬候補について、米国で第1相臨床試験(治験)を始める。感染症の病原菌などに対する免疫力は弱めないのが特徴。2015年末までの販売を目指し、ピーク時に年間400億円以上の売上高を見込む。
 新薬候補「RGI2001(開発番号)」の薬効成分は「αガラクトシルセラミド」という物質で、「リポソーム」と呼ばれる脂質のカプセルに封じ込めた。これにより薬効成分を免疫の抑制にかかわる「抑制性抗原提示細胞」に集中的に送り込め、提供者の免疫細胞による患者体内での免疫反応が起きにくくなる。
 この仕組みにより、RGI2001を投与した患者に骨髄移植をすると、骨髄提供者由来の免疫細胞は患者の臓器と接触してもほとんど攻撃しなくなるという。
 今月下旬から第1相治験に入り、12年12月末までに前期第2相治験を終える計画。この治験は約50人の患者を対象として同社が単独で実施。治験で得たデータを基に国内外の大手製薬会社と交渉し、開発・販売権を譲渡したい考えだ。
 同社は昨年中に米国で治験入りすることを目指していたが、米食品医薬品局(FDA)から治験方法の変更を求められ、約1年間延期した。今回はFDAがすでに治験入りを許可したという。
 レグイミューンはキリンビールで医薬開発事業に携わった森田社長が06年に設立。リポソーム化したαガラクトシルセラミドが特定の異物に対してだけ免疫反応を抑制することは理化学研究所の石井保之チームリーダーらが発見し、同社が特許の実施権を得た。石井氏は同社社外取締役も務める。同社はRGI2001のほかにも3つの医薬候補を開発中。前臨床段階にあるワクチン候補「RGI4000」はアステラスと共同開発契約を結んでいる。
 ▼免疫の抑制 体内では異物を受け入れて攻撃しないようにする免疫の抑制と、攻撃して排除しようとする免疫の活性化が同時に起きる。異物情報が抑制性の「抗原提示細胞」を通じて免疫細胞に伝えられると免疫は抑制に向かい、一般的な「抗原提示細胞」を経て伝えられると免疫は活性化する。通常は後者の割合が大きく、抑制は起きていないようにみえる。
 新薬候補の薬効成分である「αガラクトシルセラミド」は抗原提示細胞の能力を向上する効果があるとされる。リポソーム化により集中的に抑制性抗原提示細胞に届き、活性化より抑制の割合が高くなる仕組みだ。

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