2013年1月29日火曜日

日産新連合、トヨタ追撃、燃料電池車、開発費抑え普及急ぐ



 日産自動車―仏ルノー連合、独ダイムラー、米フォード・モーターが燃料電池車の共同開発を決めた。トヨタ自動車と独BMWの提携に続いて新連合が誕生する。日産などは提携で技術開発やコスト削減を加速しトヨタを追撃するほか、日米欧政府に燃料供給のインフラの整備を働きかける。実用化まで遠いとされた燃料電池車だが、大手の戦略提携で普及の時期が前倒しされる可能性が出てきた。(1面参照)
 燃料電池車は従来のガソリン車や電気自動車(EV)とは大きく異なる。EVでも動力を生み出す電気は当面、発電のために石炭などが使われる。燃料電池車は燃料の水素を取り出すために天然ガスを使ったり水を分解させたりするが、化石燃料を使う必要が非常に少ないという意味で環境面で優れる。EVに比べて航続距離の長さや燃料の充填時間の短さなどでガソリン車とは遜色ないというメリットもある。
 課題は車両価格の高さと水素供給のインフラ整備だが、世界大手の提携などで解決に向けて前進する。燃料電池車は10年前まで1台1億円といわれた。最近は急速にコストが下がっている。ハイブリッド車(HV)と駆動系の電気モーターなど多くの部品を共通化できるためだ。ホンダが2015年をメドに500万円以下の量販車を投入する方針を打ち出しているのも、HVでの量産効果を生かせる見通しがあるからだ。
 トヨタとホンダは1990年代から燃料電池車の基礎研究を本格化しており、中核の発電関連装置など幅広い分野で技術力が強い。日産・ルノー、ダイムラー、フォードにとっては新連合を組まなければ、技術開発などで追撃が難しい状況になっていた。
 日産などの新連合は提携でコスト削減を急ぐ。特に中核部品の燃料電池スタック(酸素と水素を反応させて電気を生み出す装置)や水素ボンベなどを共通化することで大幅なコスト削減を見込んでいる。
 「消費者に手ごろな価格で燃料電池車を提供できる。各社単独で開発するより良い成果を出せる」。日産・ルノーと独ダイムラーの共同開発プロジェクトに新たに合流することになったフォードのラジ・ナイール副社長はこうコメントした。
 今回の提携はインフラ整備を加速させるという意味でも重要だ。日産・ルノーとダイムラーは日欧連合にフォードを迎えることで、米国で燃料電池車普及への足がかりを築ける。水素ステーションなどの整備には政府との連携も不可欠だ。米政府との強いパイプをもつフォードと協力すれば、政策面での後押しを受けやすくなるとの読みもある。
 日産などの提携は他社の戦略にも影響を与えそうだ。今後はGMのほか、独フォルクスワーゲン(VW)、韓国の現代自動車などの動きが注目される。新たな陣営作りに着手するか、あるいはトヨタ―BMWなどの連合に接近するかなど今後動きがありそうだ。

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