小型モーターの磁石から 岩手大学の山口勉功教授らは、産業機械や時計の小型モーターの磁石からレアアース(希土類)のサマリウムをリサイクルする技術を開発した。酸化ホウ素を混ぜてセ氏1200度の状態で溶かして置いておくと、素材ごとに分離する性質を利用した。従来の手法に比べて処理時間が半分の半日に短縮する。進んでいないサマリウムのリサイクル技術として有望とみており、実用化を急ぐ。 新技術はサマリウムと希少金属(レアメタル)のコバルトの合金からサマリウムやコバルトなどを回収するのに使う。同合金の年間生産量は500トン程度で、高い温度でも使用でき、中国からの輸入に頼るネオジムを使わない強力な磁石として注目されている。 モーターから取り出したサマリウムとコバルトの合金に酸化ホウ素を混ぜ、電炉の中でセ氏1200度で2時間かけて処理する。冷やして取り出した固体は、酸化したホウ素、サマリウムが濃縮した部分、コバルトと鉄、銅などの合金の3つに分かれる。 サマリウムが濃縮した部分を割って取り出し、塩酸をかけて溶かす。アンモニアで水素イオン濃度(pH)を調整したうえで、化学反応の還元反応を起こすのに使うシュウ酸を加えると、サマリウムが沈殿する。セ氏400~500度で約1時間焼いて乾燥させると、粉状のサマリウム酸化物が回収できる。 実験では、回収したサマリウムの純度は96・9%、回収率は99・96%になった。従来の硫酸や塩酸などで合金をすべて溶かす手法では、鉄との分離が難しく工程も複雑で、作業にほぼ1日かかった。山口教授は「レアアースとして十分な純度があり原料として利用できる」と話す。また、コバルトも純度99・8%で回収できたという。 山口教授らは今後、回収装置を大型にした場合でも高い回収率を実現できるか検証するとともに、改良に取り組む。 ▼サマリウム 銀白色の軟らかい金属で、17種類あるレアアース(希土類)のひとつ。地球の地殻の部分に存在するサマリウムは0・00079%(7・9PPM)ほどしかない。ガリウムやジスプロシウムなどを見つけたフランス人化学者のボアボードランが19世紀末に発見した。 主に磁石に使われ、ネオジム磁石が開発されるまでは最強とされた。ただネオジム磁石はさびやすく熱にも弱いことから、高い温度での利用ではサマリウム系の磁石が広く使われている。 |
2013年1月29日火曜日
レアアースのサマリウム、リサイクル、半日で、岩手大、純度96.9%。
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