2011年7月12日火曜日

ES細胞、多能性維持の仕組み発見、埼玉医大、がん化回避に期待

 埼玉医科大学の奥田晶彦教授らは、胚性幹細胞(ES細胞)で特定のがん関連遺伝子が働かなくても、様々な細胞に分化できる能力を保てることを突き止めた。細胞培養の条件を工夫すればよいという。この遺伝子は、新型万能細胞(iPS細胞)をがん化させる危険性が指摘されている。万能細胞の医療応用時の安全性向上などに役立つ可能性がある。
 成果は米科学誌「セル・ステムセル」(電子版)に掲載された。ES細胞やiPS細胞の特徴である多能性の維持には、c―Mycというがん関連遺伝子の働きが不可欠と考えられてきた。
 研究チームはマウスES細胞を操作し、この遺伝子が働けない状態にした。通常の方法で培養すると、多能性などES細胞の特性を失って細胞死に至る。
 そこでES細胞に、分化を抑える薬剤を加え培養すると、遺伝子が働かなくても多能性を失わなかった。この遺伝子は分化を抑える役割があり、それを薬剤が代替していた。人のES細胞やiPS細胞でも同様の結果が得られるとみている。
 山中伸弥京都大学教授が開発したiPS細胞作製法では、皮膚細胞などに入れる遺伝子の1つにc―Mycを使う。しかしがん化をもたらす危険性があり、この遺伝子を使わない作製法も開発されている。
 ただ完成したiPS細胞やES細胞の内部ではc―Mycが働いており、細胞が本来持つがん化のリスクはなくせない。今回の手法を応用すれば、がん化を回避して安全性を高められると期待している。

0 件のコメント:

コメントを投稿