発表日:2015年4月13日
超高効率モーター用分析評価装置を開発
―世界初、省エネに大きく寄与―
NEDOと高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)(※1)は、モーター電磁損失の分析装置として、磁気軸受(※2)を搭載した超高精度モーター損失分析装置と薄帯状高効率鉄心材料(※3)の応力下磁気特性評価装置を世界で初めて開発しました。
これらの装置を用いて、新規磁性材料の特性を考慮した家電、産業機械、自動車などのモーターの設計および評価を行い、エネルギー損失を従来比25%削減するモーターの実現を目指します。
【用語解説】
※1 高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)
レアアースに依存しない革新的な高性能磁石の開発、さらにはモーターを駆動するための電気エネルギーの損失を少なくする軟磁性材料の開発を行うと共に、新規磁石、新規軟磁性材料を用いて更なる高効率を達成できるモーターの設計技術を開発することで、次世代自動車や家電、産業機械の心臓部であるモーターの省エネ化において競争力を確保することを目的として、2012年9月25日に設立しました。
※2 磁気軸受
磁気浮上による非接触支持を行います。摩耗がないため潤滑油が不要であり、軸受の寿命は半永久的です。
※3 薄帯状高効率鉄心材料
現在、鉄心に用いている電磁鋼板(厚さ0.3~0.6mm)と比べて非常に薄い薄帯(20μm(0.02mm)程度)として製造され、損失が電磁鋼板の1/4~1/3と小さい高効率の鉄心用材料です。
1.概要
モーターの需要は、家電や産業機械向けに加えて、自動車の電動化(HEV,EV,FCV)に伴い、拡大が予想されています。このような状況の中で、モーターの省エネ化は最重要課題の一つです。産業競争力のある小型・高効率モーターを開発するためには、実機モーター組込時の磁性特性を評価する技術や構造設計技術を開発し、その性能・信頼性評価を確立することは省エネ化を実現するために必要不可欠です
NEDOの「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」において、高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)は、モーター・磁性材料技術開発センター(※4)において、エネルギー損失を従来モーター比25%削減する高効率モーターを開発するために、高低温減磁試験評価技術と超高精度モーター損失分析評価技術、薄帯状高効率鉄心材料の磁気特性評価技術の開発に取り組みました。
2.今回の成果
(1)超高精度モーター損失分析評価装置
これまでモーターの損失評価の誤差の原因となっていた機械損失の変動要因低減技術として、磁気浮上し、機械摩擦損失の無い磁気軸受を採用しました。磁気軸受の一方にトルク検出器を介して負荷モーターを取り付け、他方に直接供試モーターを取り付ける構造とすることで、供試モーターの取付け性に優れ、供試モーター側には機械的接触部が一切無い構造としました。これにより、高精度に安定したモーター電磁損失の測定が実現し高精度の損失分析が可能となりました。
(2)薄帯状高効率鉄心材料の特性評価装置
次世代のモーター用鉄心素材として期待される薄帯状材料に応力を加えた際の磁気特性を評価する装置を世界で初めて開発しました。
モーターを回すための電磁石部分を構成する鉄心は、現在は厚み0.3~0.6mmの電磁鋼板を積み上げる構造が主流ですが、この鉄心部分には将来、損失が小さいアモルファス材あるいはナノ結晶材と呼ばれる薄帯状材料が適用されると予想されています。一方、モーターの回転力を支えるために、鉄心部分を強固に固定する必要がありますが、保持する力を加えることで鉄心での損失が増加し、素材の特性が活かせない可能性があります。
今回、髪の毛の太さよりも薄い約20μm厚の材料を折り曲げずに圧縮力を加える技術を新規に開発した結果、磁気特性の低下を定量的に評価できるようになりました。今後はこのデータを用いて、高効率な素材特性を活かしたモーターの設計を進めていきます。
3.今後の予定
エネルギーの損失が少ない高性能軟磁性材料の開発、さらにはこれらの新規磁性材料の性能を最大限に生かして更なる高効率を達成できるモーターの開発を行い、エネルギー損失を従来モーター比25%削減する高効率モーターの実現を目指します。
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