自然科学研究機構生理学研究所の等誠司准教授らは脳神経のもととなる神経幹細胞が作られる詳細なメカニズムを突き止めた。特定の遺伝子の働きを抑え込むDNA(デオキシリボ核酸)のメチル化という化学作用を解除する「脱メチル化」と呼ばれるシステムが存在し、幹細胞への成長を促していた。新型万能細胞(iPS細胞)から神経を効率よく作る技術の開発の足がかりになる可能性がある。
ハエの実験で神経の形成に関係しているのが見つかった「GCM」という遺伝子に着目した。この遺伝子はマウスの体内にもある。初期胚などを使い実験した。
遺伝子操作でGCMを働かなくすると、胚から神経幹細胞ができる量が10分の1以下に減った。神経幹細胞の形成を促す「Hes5」という遺伝子の働きが抑えられていた。詳しく調べると、Hes5はある時期まで働かないようにメチル化によってブロックされており、脱メチル化するのがGCMだった。人でも同様の仕組みが存在するとみている。
研究チームはiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)から神経幹細胞を作る際も似た仕組みがあると推定。今回の成果を活用し、万能細胞から効率よく神経が作れれば、脳の再生医療などにも役立つという。成果は米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)に18日掲載された。
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