2011年7月19日火曜日

電源、製品ごと使い分け、京大、住友電工、通信技術を応用。

 京都大学の引原隆士教授と住友電気工業のチームは、電力会社の供給電力以外に太陽電池といった自家発電や蓄電池などの電源を住宅や事業所内で使いこなせるようにする技術を開発した。様々な電源が生む電力に区別する信号を割り当て、電化製品と相性の良い電源を選んで振り分ける。既存の配電網に組み込む電源が増えてもトラブルを防ぐ。節電にも役立つ見込みだ。
 新技術は電力ごとに安定性などの質を色分けし、特徴に合わせた使い分けが実現する。従来の配電網は、一方的に送られてきた電力を使うだけ。機器側で電源を選べず、使わないときはスイッチを切るしかない。
 新技術ならば、安定した電力が必要な医療機器や空調機器には電力会社の供給電力を使い、天候で発電量が変動する太陽電池はパソコンや蓄電池の充電に使うといった利用イメージが描ける。
 引原教授は「通信を電力に応用した技術。原理の確認は終わった。あとは使い方しだいだ。2~3年以内に実用化されるのではないか」と話す。
 通信の世界では情報に送信先の信号を書き込み、膨大な数の端末があっても迷うことなく目的の情報を相手先に届ける。この仕組みを送電に応用した。
 多くの電化製品がつながった配電網を通信網に見立て、それぞれの電化製品が使う電力を必要な分だけ送る。情報通信研究機構の支援を受けて取り組んだ。
 通信網では情報を送信先へ交通整理する装置に「ルーター」がある。研究チームは「電力ルーター」と呼ぶ装置を試作した。電力会社の電力や自家発電になぞらえた電力に、それぞれ送り先を示す信号を付けて送信する実験に成功。電力ルーターが信号を読み取り、その内容に合わせてスイッチを切り替えてそれぞれの電化製品に見立てた装置に送る。
 実験では交流電源の最大17アンペア、200ボルトに対応する仕様で装置を試作。電源と電化製品に見立てた装置を2つずつ電力ルーターとつなぎ、送信先の切り替えができることを確認した。
 試作した装置のスイッチの切り替え速度は1ミリ秒以下。実用化には数十マイクロ(マイクロは100万分の1)秒以下にする必要がある。京大と住友電工は高速切り替えに最適な炭化ケイ素(SiC)製半導体を開発済み。現在のシリコン製半導体と置き換えれば、高速化を実現できる見込みだ。
 電力ルーター同士は通信機能がある。複数台を組み合わせれば、どこから供給された電力かを見極め、電力の安定性に合わせて供給先の電化製品を選べる。将来は地域の電力網などにも応用できる可能性がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿