2011年7月19日火曜日

イネ、土壌から鉄有効利用、東大が遺伝子解明。

 東京大学の西沢直子特任教授らはイネが土壌から吸収し、細胞壁に沈着している鉄を溶かして有効利用する際に欠かせない遺伝子を突き止めた。この遺伝子が強くなるよう改良すると、アルカリ性が強くて植物が育ちにくい土壌でもイネがよく育つことも確認した。成果は米専門誌ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(電子版)に掲載された。
 東大のバシル・クーラム特任研究員、東北大の石丸泰寛助教らとの共同研究成果。鉄は植物の生育に不可欠な元素。イネは土壌中の鉄を溶かして吸収するため、ムギネ酸類という物質を根から分泌しているが、いったん吸収した鉄を有効利用する仕組みも存在している。
 研究チームはイネが根などの細胞壁に沈着した鉄を溶かすのに「フェノール性酸」という物質を利用しているのを突き止めた。この物質を細胞の外側に分泌する際に働くのが「PEZ」遺伝子で、細胞膜に存在していた。
 この遺伝子を壊したイネは、フェノール性酸が細胞外に出ていけず、細胞壁に沈着した鉄を溶かし出せなくなった。栄養や水分を運ぶ導管の中の鉄濃度が下がり、地上部に鉄が十分運ばれなくなり、生育も悪くなった。逆にPEZを強く働かせると、本来は育ちにくいアルカリ性の土壌でもよく生育した。
 フェノール性酸はイネ以外でも鉄の利用に重要なことが知られている。ムギやトウモロコシ、人でも働いているという。今回の成果が、イネ以外でPEZに相当する新たな遺伝子の発見につながると期待している。

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