関西大学の宮田隆志教授らは、光で表面に微細な凹凸をつけられる樹脂素材を開発し、たんぱく質などをスタンプのように転写することに成功した。マイクロチップなどの微小部品の作製に幅広く利用できるとみている。微小部品の作製には大がかりな装置が必要だったが、新技術なら光を当てるだけですむ。低コストの微細加工法として実用化を目指す。 開発したのは光エネルギーを吸収して収縮する高分子樹脂。光反応性のケイ皮酸ビニルとポリジメチルシロキサンを組み合わせた。樹脂に紫外光を当てると、その部分だけ構造が変わって薄くなる。45マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル間隔の格子模様のフィルターを載せて光を30分当てると、樹脂に凹凸ができ、格子がきれいに浮かび上がった。境界線も鋭かったという。 こうして作った格子模様の表面をスタンプに見立て、蛍光色素を付けたたんぱく質が入った溶液をインクにしてシリコンウエハーに押しつけた。蛍光顕微鏡で観察すると、スタンプの出っ張った部分のたんぱく質がウエハーに移る一方、くぼんだ部分にたんぱく質は付かず、格子模様をうまく転写できたことが確認できた。 たんぱく質などで微細模様を描くには、フォトリソグラフィーを使う方法もある。研究グループが開発した新技術と同じように光に反応する樹脂を利用する。ただ、光を当てて固まる性質のため、後で余分な樹脂を酸で洗って取り除くなどの作業が必要。新技術は光を当てる1度の操作だけなので、より簡便で使いやすい方法になる可能性がある。 応用例としてはたんぱく質の粒をチップ状に並べたマイクロチップや、マイクロ流路などが考えられる。どれほど細かい模様が描けるかを確認し、くっついてきれいにはがれる物質などスタンプとインク選びの相性も調べる。 |
2011年7月19日火曜日
関西大、光で微細模様、樹脂開発、たんぱく質転写――低コストの加工、有望。
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