2011年7月19日火曜日

電力自給の下水処理、メタウォーター、50~100%賄う――発生メタン活用。

 水処理事業の国内最大手であるメタウォーター(東京・港、木田友康社長)は下水処理向けに、バイオマス発電などを利用して電力を賄うシステムの開発にめどをつけた。特殊樹脂で下水を効率的にろ過するほか、汚泥を発酵させてつくるメタンガスを使い燃料電池で発電する。都市ガスも原料に加えると下水処理に必要な電力の50~100%を供給でき、来春以降に全国の自治体へ売り込む。
 このほど、省エネ型の下水処理技術の開発を目指す国土交通省のモデル事業に選ばれた。国交省から11億円の補助金を得て、大阪市内の下水処理場にパイロットプラントを建設する。1日当たりの処理量は5700立方メートルの見通し。日本下水道事業団と共同で、2012年3月まで実証実験に取り組む。
 下水処理場では通常、家庭などの汚水を沈殿池に一定期間ためて、水と固形物を分離する。固形物と分離した後の水は、さらに微生物を入れて有機物を分解して浄化している。この際、空気を送り込んで微生物の働きを活性化させるため大量の電力が必要。下水道処理施設で使う電力の約3割が空気を送り込む装置で利用されている。一般に下水処理場で使う電力は日本全体の電力供給量の約1%を占めるという。
 メタウォーターのシステムはまず、家庭から出た汚水を貯水槽に入れ、水と汚泥に分離。装置内に浮かせた樹脂の粒の間に水を通すことで、効率的に水を浄化する。汚泥の除去率は66%と従来より20ポイント改善する。樹脂でろ過した水は有機物が少なく、微生物による浄化処理に必要な電力を2割減らせるという。
 こうして前工程で省エネ化したうえで、水と分離した後の汚泥を自家発電に利用する。汚泥槽の中に菌を入れて発酵させ、メタンガスを発生させる。槽に不織布を入れて菌を増殖しやすくするほか、自治体が家庭から回収した生ゴミも加えてメタンガスの発生量を増やす。
 このメタンガスを原料に燃料電池で発電する。大阪市の実証設備の場合、メタンガスだけの発電量能力は25キロ~30キロワット。燃料電池の原料として都市ガスも使えば能力は100キロワットと、実験場となる下水処理設備の電力をほぼ賄える。
 電力不足の長期化が予想されるなか、実証実験で効果を確認して自治体に販売する。新システムは一般の下水処理設備で使う電力の50~100%を供給できる見通し。将来は新興国など海外でも販売する考えだ。
 メタウォーターは富士電機グループと日本ガイシの水事業が統合して08年に発足した。10年度の売上高は09年度比で横ばいの1005億円、営業利益は約2割増の81億円だった。

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